米海軍のF-35C 南シナ海で着艦失敗 引き上げは…

 米海軍の太平洋艦隊は24日、南シナ海で通常飛行をしていた最新鋭ステルス戦闘機F-35Cが空母「カール・ビンソン」への着艦に失敗し、パイロットを含む7人が負傷したと発表しました。

緊急脱出したパイロットはヘリコプターで救助され、容体は安定しているようです。

負傷者7人のうち3人(パイロットを含む)は、治療のためフィリピンの首都マニラへ搬送され、容体は安定。残る4人は艦内で治療を受け、うち3人が治療を終えたとのこと。

 F-35Cは着艦に失敗し、着艦デッキに衝突、その後機体は海に沈んだようです。着艦ワイヤーが切れたのかもしれません。着艦デッキへのダメージは最小限ですみ、離着艦の運用は継続されており、南シナ海での演習を継続しているようです。
SNSでは海上に浮かぶF-35Cの画像などが出てきました。

 機体の改修が海軍のトッププライオリティーになりそうです。もし、機体が比較的原型をとどめる形で海没した場合、F-35関連の機密情報を手にしたいアメリカの対応勢力、特にロシアと中国の手に渡ることはなんとしても避けたいシナリオです。特に、ロシアは小型で特殊な用途に使用できる特殊任務用の潜水艦や、深海からのサルベージ(引き揚げ)用の特殊支援船を保有しています。
また、庭先の南シナ海を自国の海と主張する中国もこの事故に非常に興味を持っているはずです。

 2021年、英国のF-35Bが地中海でHMSクイーンエリザベスからの離艦に失敗し、機体が海に沈む事故がありました。一部では、エンジンカバーが取り付けたままor吸い込んだという噂もありますが、、この時も英国政府は機体の重要な情報が漏洩することを懸念し、引き上げが行われました。機体は海底1マイル(16000m)から引き上げられたようです。

 今回の事故に関しても、海中の状況や天候、機体位置の深さ等で引き上げが現実的なのかが判断されるでしょう。

<2月1日追記>フィリピン・ルソン島西で引き揚げ作業が実施される模様です。海上保安庁が航行警報を発出し、北緯17度50分、東経117度36分付近と情報提供しています。墜落したF-35Cは、第2空母航空団(CVW-2)の第147戦闘攻撃飛行隊(VFA-147)「アルゴノーツ」所属機です。

<2月8日追記>
Youtubeに事故の瞬間を捉えた映像が出てきています。前半はデッキにあるPLAT(Pilot’s Landing Aid Television)と艦橋のカメラ室からの映像となっています。

 

 2019年に日本の航空自衛隊のF-35Aが太平洋に墜落した事故に関しては、知る限りでは機体は引き上げられていません。この事故は機体が海面に高速で衝突したことで、機体がバラバラになった可能性が高いからです。今回のF-35Cの事故は着艦スピード+着艦でかなりの低速であったことから、機体の原型をとどめている可能性が高く、引き上げを行う可能性は非常に高いでしょう。

 米海軍の行った機体引き揚げ例では、2021年に、2020年に海没したMH-60S Seahawkヘリコプターを沖縄沖の海底19,075ft(5,800m)から引き揚げたことがあります。

 カール・ビンソンと米空母「エーブラハム・リンカーン」率いる空母打撃群は先週、海上自衛隊と共同訓練を実施。23日から南シナ海で演習を行っていました。