空対艦巡航ミサイル「ASM-3」の改良型400km+射程を目指す。

(2019年3月17日の週)防衛省の発表で(対中国念頭の)長距離対艦ミサイルの開発のニュースがありました。

「長距離対艦ミサイルASM-3」に関して、ちょっとだけメモ程度で。。。

  • 空対艦巡航ミサイル「ASM-3」とは?
  • ASM-3は作ったけど、使えない(発射できない)?
  • 何故、ASM-3を調達しないで、次のミサイル開発するの?
XASM-3-E 空対艦ミサイル(対艦誘導弾) Photo: Hunini(Wikipedia)

空対艦巡航ミサイル「ASM-3」とは?

本来は2003年〜2010年に完了するはずだったが、開発予算の承認を得られず、2010〜2016年に繰延され、最終的には+1年遅れの、トータル7年遅れで開発完了したミサイル。

最大の特徴は、ラムジェット推進と固体ロケットの統合推進を採用しており、アクティブレーダーホーミングとパッシブレーダーホーミングの複合シーカーで敵艦艇を探知することで、敵艦艇を確実に撃破できるようになっている。マッハ3程度の超音速で飛ぶのが特徴で、主に対艦、対地攻撃を担う航空自衛隊F2戦闘機に搭載する予定だったが、射程距離(約200キロ)が短く配備に至っていなかった。

ASM-3は作ったけど、使えない(発射できない)?

…そうみたいです。正確には、能力を最大限に発揮できない状態らしいです。この部分は、なんとなく日本の国産品の軍事ニュースでよく聞くパターンのような。。。

3月19日の防衛大臣記者会見を参考ください。

Q:関連ですが、今でき上がっているASM-3は、もう調達はしないのでしょうか。

A:ASM-3というのは、F-2のみが搭載可能なのですが、この能力を最大限発揮するには、新たなミッションコンピューター、AMC(アドバンスド・ミッション・コンピューター)の搭載が不可欠だと承知をしております。そして、このAMCというのは、まだ開発中でございまして、従って、でき上がったASM-3については、直ちに導入ということではなくて、長射程化を図り、また、AMCをしっかり開発した上で、導入を図っていきたいと、これもできるだけ早く導入ができるように、努力をしていきたいと思っております。

(リンク: https://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2019/03/19a.html)

要約すると:

料理は作ったけど、お皿がまだ準備できていない、お皿も古くなってきたので、新しいお皿に変えるのですが、それに合わせて料理も冷めてしまうので、作り直そうと思います。

ということです。でも、作り直す料理は、もう少し長く味わえる深い味わいの様です。

何故、ASM-3を調達しないで、次のミサイル開発するの?

開発当初は、飛行距離が十分だと思って200kmほど離れて発射すれば安全だと思っていたが、仮想敵国の軍艦が搭載している艦対空ミサイルの射程が伸びてきた。例えば、母機(F-2戦闘機等)が相手レーダーに見つかり、ミサイルを発射する前に迎撃される可能性大となる為、これを上回る長射程の対艦ミサイルを装備してスタンドオフ攻撃を行う必要が出てきたということです。

ちなみに、2016年に台湾海軍で行われたシミュレーションでは、中国海軍の艦船発射型のHHQ-9Aを搭載した旅洋III型(052D型)は、4機のF-2戦闘機から発射された合計8発のASM-3に対して、迎撃することは困難という結果もあります。(ASM-3は840kg程あり、F-2には最大2発しか搭載できない。ASM-2であれば4発搭載可能。)

先ほどの記者会見の続きで:

Q:今のASM-3の関係ですが、研究開発にまだこれから時間がかかると思うのですが、しばらくしたらまた、F-2は退役時期が始まるわけで、そうすると開発というのは、F-2の後継機を視野に入れて開発されるのでしょうか。

A:当然、そうでなければいけないのだろうと思います。

とあり、次期戦闘機に搭載を視野にとのことです。

次期戦闘機はステルス戦闘機と想像しますが、このASM3ミサイルor改良型を搭載するには機体の内部武器庫(ウェポンベイ)には搭載不可と思われますので、機体外部に搭載となるでしょう。そうなれば、ステルス機のステルス性能は奪われます。ステルス性能のない対艦ミサイルを今後開発し続ける意味としては、次期戦闘機での運用に加え、F-15戦闘機をミサイル母機とすることや、JSMなどの誘導方式や速度、飛翔パターンの異なるミサイルとの組合せなど選択肢を増やせますし、「飽和攻撃」を行うことで敵艦艇の防空網を打ち破ることが可能となります。

ちなみにJSMはステルス性能があり、F-35のウェポンベイに搭載可能で、コストも安いようです。(JSMもASM3も搭載できる弾頭のサイズは近い数値です。) ノルウェーKONGSBERG社「対艦・対地巡航ミサイル”JSM”」の日本向け供給契約締結に関する以前の記事もご覧ください。

これらの長距離ミサイルの導入が、直ちに運用側の対艦(対地)攻撃能力の向上につながるわけではありません。これらの装備を効果的に運用するには、先ずは相手目標の位置情報を入手し、移動する相手情報を更新し続けるISR体制の強化、そして攻撃の優先順位等を定め伝達するネットワーク網の強化が必要と思います。いくら器用な手先を持っていても、目が悪くては正確に物に触れることができないからです。この分野に関しても今後書いてみたいと思います。