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電子戦機(1) – EA-18G Growler Block IIアップグレード

EA-18G Growler Photo: Pixabay

電子戦機に関して:
(1) – EA-18G Growler Block IIアップグレード
(2) – 電子戦機の今後 と日本の電子戦能力
と分けて書いております。

(1) – EA-18G Growler Block IIアップグレード
ボーイングEA-18Gグラウラー電子戦(攻撃)機に関して、米海軍は7月に最終の機体を受領予定で、2009年から続いてきた機体受領が終了します。これにより20年間にわたって行われてきたEA-6Bプラウラーの後継機開発と配備という一連のプロジェクトの幕が降りることとなります。

電子戦に関しては、米軍装備に対抗する装備も日々進化している為、早速、5月末には更新プロジェクトの計画が米海軍から発表され、EA-18G電子攻撃機の「Block II(ブロック2)」規格へのアップグレードが正式にローンチされました。

今回海軍から発表されたのはRFI(Request for Information – 提案依頼書)と、各種情報の提供を製造者に対して求めるものです。内容的には、電子攻撃ユニット(EAU) サロゲートプロセッサ(ESP)、AN/ALQ-218(V)4 RF 受信システム、AN/ALQ-227(V)2 通信対策セットなどのTJS(戦術電波妨害装置)構成品のアップグレードに関して、NRE(試作設計)を求めるものです。

米海軍が保有する全161機のグラウラーへのBlock II化計画は2020年7月から始まる予定で、恐らく11機を保有するオーストラリア空軍の機体に対しても同様のアップグレードが行われるものと思われます。(フィンランド、ドイツなどが今後のユーザー候補国。日本も一瞬話題になりました。)

「アドバンスドグラウラー」としても知られていたこのBlock IIアップグレード計画は、海軍のF/A-18E/FスーパーホーネットのBlock IIIアップグレード更新計画をベースにしています。どちらの計画も、前後コックピットの計器盤が10×19インチ(約21インチワイド)LADディスプレイ、胴体上部にコンフォーマル燃料タンク(CFT)が装備されるというものです。これにプラスして、グラウラーは先に記載した、次世代ジャミング装置、電子攻撃センサーの能力向上、戦術ネットワークと操作性の向上が計画されています。

先代のEA-6Bプラウラーは2019年3月に最後の機体が退役したことで、EA-18Gグラウラー電子攻撃機は、米軍が保有する空母と陸上基地両方で運用することができる、唯一の電子攻撃機となりました。2009年に部隊配備された比較的新しい機体でスーパーホーネット譲りのAPG-79AESAレーダーによるクロスキューイング能力等で優れている部分はあります。しかし、電子戦に使用されるミッション機器の多くをそのままEA-6Bの時代から引き継いでいる状態です。

これからの電子戦環境は新しい種類の脅威に対応していく必要があります。EA-18GはEA-6Bが経験したことをはるかに超える能力を持つ敵対的レーダーに直面する可能性があります。例えば、EA-18Gの妨害電波の存在を検知し適応することができる相手の新種レーダーが、異なる波形や信号処理技術に移行することで、EA-18Gの妨害電波によるジャミング攻撃を軽減することを可能にするかもしれません。

電子戦の世界は生々流転の世で、次から次へと対抗策が生まれてきます。その為に、大容量&高速でコンピューターが必要となり、適応分散処理できるシステム構築が必要となります。

アップグレードの内容予想:
EA-18G Growler Block IIのアップグレードの詳しい内容はまだ明らかではありません。しかし、これまでの開発やテストからどのような能力を有することになるのかのイメージを持つことはできます。
・無人機の使用
・ALQ-218(V2)に続く次世代バージョン
・ソフトウェア無線技術

無人機の使用
例えば、電子攻撃ミッション機器を製造するノースロップ社は2017年12月に「Dash X」というコンセプトを発表しました。これはアップグレードされたEA-18G Growlerに搭載したクラスター爆弾サイズの直径16インチのキャニスターに収められた無人航空システム(UAS)で、最終形状ではないと思われますが、キャニスターからパラシュートで投下される使い捨てタイプで、敵対的防空網に侵入し、敵対的なレーダーや無線機からの信号をUAS機体の下部に取り付けられた装置で拾い上げ、それらの信号に関する情報をEA-18GやB-52Hに送り返すことができるというものでした。実験では、電波を発する車両を検知し、車両位置を割り出すことができました。写真で見る限り、機種にはラジコン飛行機に使用されるような小さなピストンエンジンがついており、このエンジンからの熱はサーマル探知されやすく、そのエンジンと共に3.66mの機体幅によってある程度のレーダー反射面積(RCS)になると思われますが、60ノットの超低速と薄い機体によって被撃墜率を下げ、かなり目標まで近づくことができるようです。レーダーには鳥のように映るのでしょう。このようなUASシステムを搭載、運用するという能力もBlock IIの能力の一部となりそうです。

ALQ-218(V2)に続く次世代バージョン
EA-18Gは配備開始した2009年からノースロップのパッシブALQ-218(V)2レシーバシステム(主翼端に付いているポッドのこと)を運用してきましたが、2015にはEA-18Gの編隊がデータリンクTactical Targeting Networking Technology (TTNT) を使用して新たな能力を実証しました。これは到達時間差方式を使用し、パッシブALQ-218レシーバからのデータのシェアリングと、データをもとに三角測量することで、海上に設置されたターゲットの送信設備の位置を正確に補足することができました。
EA-18G Block IIではこのレシーバーユニットに関しても、アップグレードがもちろん計られますので、低周波送信機のさらに高速で高精度な位置情報取得能力を得ることになると思われます。
海軍の資料(Budget Item Justification)の中には、従来の方法では検出または識別できない複雑な波形を持つ高周波エミッタの検出と識別ができるALQ-218(V2)に続く次世代バージョン(LBDR)に付いても記載されています。

ソフトウェア無線技術
これまでの電子戦のコンセプトは敵側のアナログ送信機がジャミングするように強力な妨害電波を送信することでした。しかし、新しい脅威となる敵のレーダーも複雑で、プログラム可能で機敏な波形を使用するデジタルレーダおよび無線機であるため、初めて検知する波長に対して、どれだけ早く波長データを処理し、対応できるかということになってきます。
これに関しては、DARPAによってアダプティブレーダー対策とアダプティブ電子戦のための行動学習プログラムが開始され、Office of Naval Research(ONR)は2016年にReactive Electronic Attack Measures(REAM)と呼ばれるプログラムを開始しました。これは特にEA-18Gの妨害システムの改善を目的としたものです。
ONRによるREAMのコンセプトは:敵対的エリアでEA-18Gが未確認のレーダー照射を受けます。同時に、そのレーダーの特性を迅速に特徴付け、自動でその特定の信号に対する対抗策(countermeasure)を発します。海軍の予算報告書では、この対抗策を複数のレーダーに対して同時に行い妨害できるとしています。
「REAMは機械学習ロジック、電子攻撃技術の自動化、ソフトウェアとハードウェアのアップグレードによって可能となる」と同書類の中には述べられています。

これは全てではないですが、無人機、低バンドの妨害装置ポッド(LBDR)とREAMの組合せなどをみると、Block IIで実施されるアップグレードの可能性を少しだけ想像できます。

(2) – 電子戦機の今後 と日本の電子戦能力続く

(無人機の使用 参照資料:http://www.nationaldefensemagazine.org/articles/2017/12/7/northrop-grumman-reveals-canister-deployed-uav-concept-for-maritime-surveillance)
(ALQ-218(V2)に続く次世代バージョン 参照資料:https://www.dacis.com/budget/budget_pdf/FY19/RDTE/N/0604269N_119.pdf )
(ソフトウェア無線技術 参照資料:https://www.militaryaerospace.com/sensors/article/16722184/vadum-to-support-electronicwarfare-project-to-counter-waveformagile-enemy-radar-with-machine-learning)