Boeing 787HGWバージョン

 Boeingが787-9もしくは787-10のER(Extended Range)バージョンを開発した場合に関してメモ。
HGW=High Gross Weightバージョンの787-10はどのような機体になるのか?
市場的にもこのシリーズの機体に後+1,000nm(1,852km)飛行距離を伸ばすことができれば、ニュージーランドから米国への飛行を必要とする客先へ良いアピールとなるかもしれません。

 Boeing 787シリーズの中で最もサイズがある787-10は、長距離路線用のコンフィグレーションの2クラス、330席の場合、ビジネスクラス32席、エコノミークラス298席となっています。このコンフィグレーションで6,430nm(11,900km)の航続距離があります。ボーイングはこの時の旅客者一人当たりの手荷物計算は102.1kg/225lb計算で行なっています。

現在の787-10のMTOW(Maximum Take-Off Weight最大離陸重量)は254tで、機体と旅客に167tを使用すると、残りの87tが燃料となります。この87tの内、9tは予備の燃料として残しますので、残り78tを6,430nm(11,900km)の飛行の為に使用できます。
+1,000nm(1852km)飛行距離を伸ばすには、より多くの燃料が必要となります。(この追加の燃料を確保するためには、燃料スペース、追加された重量へのエンジン推力と強化された降着装置も必要になります。)1000nm飛ぶ為には、更に2時間12分分の燃料が必要となります。燃費が4.9t/時間として、
燃料を増やすと効力も増えますので、10.8t(4.9t x 2.2時間)よりも多めの重量が必要となります。プラス、2.2時間追加して飛ぶことに対する予備燃料も加えなければなりません。
長く飛ぼうとすると機体のリミットに近づいていきます。MTOWを増加させることは可能ですが、燃料タンクの更に燃料を入れる必要があります。
787のタンクは101.5tの燃料を入れることができます。87t+に予備燃料の10.8t+αで、機体のタンク容量のリミットにかなり近づきFuel Limitedの状態になります。遠距離を飛ぶには更なるタンスのスペースが必要ということです。どうすればこのスペースを確保できるでしょうか?MTOWは254tなので、燃料の限度は予備分を除くと、78tが限度でしたね。
機体のMTOWを268.5tにすれば燃料が限度を迎えることなく、更なる900nmを飛行することが可能となります。しかし、機体が重くなることでその重量に耐える機体構造に強化する必要があり、それもまた機体重量を重くする要因となります。
この追加されたMTOW14.5tの重量への、機体の構造強化と降着装置の強化に500kg増加したとして、330名の乗客と機体の重量は167.5tとなります。これで燃料は101tとなり、機体タンク容量の101.5t以内に収まることができました。

787-10のMTOWを15t増加させることは可能でしょうか?
機体のMTOWを増加させるときに機体にかかるストレスを考える必要があります。そのリミットを超えるようであれば、機体の構造強化を行う必要があります。重要なパーツは通常、主翼と降着装置です。

787-10の降着装置は追加の荷重に耐えれるでしょうか?これに関しては、問題なく、いくらでも肉付けできます。それよりも空港滑走路や誘導路、エプロンへの舗装面への荷重が問題となるかもしれません。機体重量が増えた787-10ERとなっていくと、777-300ERや777Xの数値に近づき、これらの機体に適用されるエプロンや誘導路の使用条件が適用される可能性があります。
この荷重が増えないように、787-10の降着装置の車輪間隔を広げ、それらが降着装置格納庫に収まれば、、、ですがそれは難しいでしょうね。

787-10ERの最大離陸重量での翼荷重は700kg/m2から750kg/m2です。これはまだ777-300ERの770kg/m2には及びません。しかし、機体を更に高い離陸速度にする強化されたエンジン、もしくは長い滑走路が必要となります。787-10のエンジンはこれまで何度も改良されてきましたので、あまり余力が残っていないというのも事実です。ですから、離陸時のエンジン推力と離陸時のパフォーマンスとのギブアンドテイクになるでしょう。もし787-10ERという機体が開発されたとするならば、エアラインとしては長い滑走路を必要とするか、エンジンの寿命を犠牲にするかのどちらかを選ばなければなりません。

まとめ
機体構造を強化した787-10であるERバージョンは有り得るかもしれません。787-10ERはMTOWを14.5t増加させ、その航続距離を7,300nm(13,500km)に延長できるかもしれません。結果的に、777-300ERと類似の航続距離を達成し、(燃料を満タン状態で)類似の舗装面荷重と翼荷重となりそうです。