KC-46A空中給油ブームアクチュエーター再設計に$55.5M

KC-46A Pegasus Photo: Boeing

ボーイング社はKC-46A空中給油機(ペガサス)に関して5550万ドルの変更契約を受けました。この契約は空中給油用ブームアクチュエーターの再設計に必要となるハード・ソフトウェアへの費用です。(初回2100万ドルの支払の後、契約内容が固まり次第残金の支払い。)

KC-46Aは、技術的な欠陥がある状態でしたが、ボーイングは自社で改修費用を負担することを合意し、当初の納期から2年遅れの今年1月から空軍へ納入が開始できるようになっています。(初納入時点で、ボーイングの開発費は、2011年に空軍との開発契約締結以来40億ドル近く超過しています。)

他のボーイングが責任を持つ不具合とは違い、今回の空中給油用ブーム(フライングブーム)アクチュエーターの再設計がボーイング責ではなく、米空軍が支払うとなっている経緯は、ボーイングが納入した仕様は、国際基準に準拠し、米空軍も2016年(契約Milestone Cにて)にそのデザインに関して、承認し設計許可を出している為です。

しかし、今回の問題は実際のフライトテストで空中給油を行なった際に、F-16戦闘機やA-10攻撃機など受油機側が比較的軽い機体の場合、給油ブーム自体の力が強すぎることがわかり、受油機側がブームと接続もしくは離脱する際に、これまでのKC-135給油機等と比べ、これまで以上の力が必要となっているとのこと。過度の力を必要とする事で、場合によって機体とブームが衝突し双方にダメージが出る場合もある為、危険であることから、再設計が必要となりました。新しいブームアクチュエーターの設計と製造には2年ほどかかるとの事です。

これとは別に、ボーイングが自社で改修費用を負担するとしている不具合の一つは、給油カメラ(RVS-Remote Vision System)の不具合で、機体下部に取り付けられた3台のカメラとセンサーにより空中給油ブームを操作するオペレーターが、受油機へブームを操作しますが、このシステムに基本的な欠陥があると米空軍は考えており、この3台のカメラのうち、外に斜めに取り付けられたカメラ2台の画像に関して、映りこむ受油機の機体画像が歪んで見えてしまう原因となっており、表示するソフトウェア/画像プロセッサでも修正できないようです。これにより、ブームオペレーターが操作を誤り受油機側の機体塗装を剥いでしまうことがあったようです。これはステルス機の特殊コーティングなどに傷をつけるとなった場合、ステルス性を低下させると共に、非常に高額な塗装補修費用原因となり得る為、問題視されています。

ボーイングは8月上旬にさらに3機を米空軍に納入しており、これで計16機納入済みとなります。ボーイングは2019年中に36機を納入することを目標としていますが、米空軍の受入体制は月3機としている為、今年末に米空軍が受け入れることのできるトータル機数は28機に留まると思われます。

米空軍はKC-46Aを合計179機導入する予定で、KC-10やKC-135をこのボーイング767をベースとした新しい機体と順次入れ替えていきます。日本の自衛隊でも3機調達する計画です。

過去の記事

参照記事リンク:
https://www.defensenews.com/air/2019/08/06/heres-why-boeing-is-getting-555m-to-fix-a-problem-with-the-air-forces-new-tanker/