Sikorsky-Boeing SB-1 DEFIANT 試験飛行再開(動画)

The Sikorsky-Boeing SB>1 DEFIANT; helicopter achieved first flight March 21, 2019. With its two coaxial main rotors and rear-mounted pusher propulsor, DEFIANT is unlike production rotorcraft available today. Photo courtesy Sikorsky and Boeing.

 シコルスキーSB>1デファイアント(シコルスキーとボーイング社で共同開発中の二重反転式ローターヘリコプタープロトタイプ機)の久々の飛行(4度目)の様子がアップされました。飛行は9月24日にフロリダ州ウェスト・パームビーチにあるシコルスキーの試験場で1時間のフライトが行われました。

3月の初飛行後4月まで3度飛行試験を実施していましたが、その後、地上でテストしている動力テストベッドのギアボックスで不具合が見つかり、機体を飛行停止していました。ギアボックスの不具合は「bearing creep」(クリープ)となっており、ベアリングの摩耗で隙間が起きてしまう現象です。

このギアボックスはトランスミッションの内部にあり、この部分の設計変更がなされました。これにより地上のテストベッド、飛行試験機体、風洞モデル全てで変更の必要が発生し、4度目のフライトが5ヶ月後にようやく実施できたようです。

当初のプランでは、今年中に115時間のフライトを行う計画でしたが、今後2週間以内に5度目のフライトを行い、2020年第一四半期の終わりまでにはフライト毎に40kt(74km/h)速度を上げながら230ktを達成する計画です。NASAのエイムズ研究センターにある風洞用サブスケールモデル(1/5モデル)では250ktを達成できており、実機もそれに近い248ktが可能のようです。

 SB>1デファイアントは米陸軍の将来型垂直離着陸(FVL)、FLRAA(Future Long-Range Assult Aircraft)ロータークラフト技術実証機です。この機体に先立ってX2試験機(2008年初飛行)や同軸反転ローターのS-97レイダー(2015年初飛行)などの飛行実績が反映されています。

同軸反転ローターと尾部にプッシャープロペラを採用する複合ローターシステムを持ち、「コンパウンドヘリコプター」と呼ばれています。

コックピットはパイロットが左右に着座し、操縦系統はフライ・バイ・ワイヤが採用されています。メインキャビンは12〜18人乗ることが可能です。(装備による)

機体サイズからも分かる通り、現在使用されているUH-60ブラックホークや、AH-64Eアパッチなどの中型機の任務を引き継ぐ武装ヘリコプターで、V-22などのチルトローターと従来ヘリコプターとの共同作戦などでは、どうしても従来のヘリコプターは速度や航続性能で不足しているのですが、そのギャップを十分に埋めることができる性能を目指しています。

対抗機種としてはBELL社V-280 Valorがあり、どちらの機体も最終的に米陸軍のFLRAA(Future Long-Range Assult Aircraft)採用される機体ではなく、技術実証機です。最終的なデザインは2年後2021年の秋頃までにメーカーが提出し、その後米陸軍が2022年3月頃に最終決定するというのが現時点でのスケジュールです。

このSB>1デファイアントもその頃には、陸軍の要求を反映した機体となる為、機体サイズも若干大きくなるようです。

対抗機種のBELL社V-280 Valorは2017年12月に初飛行を成功させ、これまでに100時間以上のフライトと300ktsの速度を達成しています。更に、無人飛行モードのテストに移行しているというニュースも先日ありました。

先日の記事で、将来型攻撃偵察機(FARA:Future Attack Reconnaissance Aircraft)プログラム向けに、Bell 360 Invictus「インビクタス」SIKORSKY(LMT)社「RAIDER X™」を取り上げましたが、こちらは逆にSIKORSKY(LMT)社がS-97 Raider実証機での飛行試験を2015年の初飛行以来進めており、Bell社はコンセプト/モックアップを発表したばかりです。

参考リンク:
https://www.ntn.co.jp/japan/products/care/damage/creep.html