シコルスキー社 軽攻撃偵察ヘリコプターRAIDER Xを発表

Sikorsky introduced RAIDER X as its entry to the U.S. Army’s Future Attack Reconnaissance Aircraft (FARA) prototype competition. RAIDER X draws on Lockheed Martin’s broad expertise in developing innovative systems using the latest digital design and manufacturing techniques. Image courtesy, Sikorsky a Lockheed Martin company.

 2019年10月14日ベル社は米陸軍の将来型攻撃偵察機(FARA:Future Attack Reconnaissance Aircraft)プログラム向けの機体コンセプトBell 360 Invictus「インビクタス」を10月上旬に公開したばかりですが、これに対抗する機体「RAIDER X™」がロッキードマーティン/シコルスキー(SIKORSKY(LMT))社から公開されました。

これでBELL社とSIKORSKY(LMT)社の2社からコンセプトが発表されたことになりますが、それ以外にBoeing社、AVX/L3社共同提案、Karem Aircraft社が提案する5社となっています。

今回発表されたRAIDER Xは、長年の開発、テスト、改良で培われた実証機X2のテクノロジーとS-97 Raider の技術を応用した機体であり、米陸軍のFARAプログラムに対する低リスクソリューションであると紹介されています。

RAIDER Xは、最新のデジタル設計および製造技術を使用した革新的なシステムの開発におけるロッキードマーティンの幅広い専門知識を活用しているとし、以下の能力をアピールしています。

Exceptional Performance:X2リジッドローターにより、高い操縦応答性、低速ホバー性能、軸外ホバリング性能、レベル飛行時の加速と減速、これらの分野での高いパフォーマンスを可能としている。

Agile, Digital Design:CH-53K、CH-148、F-35などの他のロッキードマーチンおよびシコルスキーの生産プログラムでは、最先端のデジタル設計および製造がすでに使用されており、米陸軍にとって買収コストを引き下げるだけでなく、頻繁な機体アップグレードを入手可能なコストに抑えて可能にし、進化する脅威に対抗し続けていくことが可能となる。

Adaptability:近代的なオープンシステムアーキテクチャ(MOSA)ベースのアビオニクスおよびミッションシステム。コンピューティング、センサー、サバイバビリティおよび武器のための「プラグアンドプレイ」オプションを提供し、攻撃力とサバイバビリティ、運用ミッション調整と選択を可能にしている。

Sustainable/Maintenance:定期的なメンテナンスと検査から、セルフモニタリング(自己監視)と機体状態に基づいたメンテナンスに移行する新しい技術を利用することにより、航空機の運用コストを削減するように設計されています。これにより、航空機の稼働率が向上し、機体維持負荷が削減され、柔軟なメンテナンスでの機体運用が可能になります。

Growth/Mission Flexibility:X2のコンパウンド同軸技術は、将来の進化し続ける脅威に焦点を当てており、比類のない可能性と成長マージンを提供し、速度、戦闘半径、およびペイロードを増加させています。このポテンシャルと機体性能マージンにより、運用ミッションの柔軟性がさらに高まり、特定のミッション要件に対応するために、より広範な機体構成と装備セレクションが可能となっている。

この機体のデザインは、最も目を引くのが二重反転式ローターと機体後部の推進用プッシャープロップを備えたコンパウンドヘリコプターです。
高速化を実現するため「Advancing Blade Concept Rotor」というリジッドローター(主回転翼の各々の羽根の迎角を羽根の前進翼状態から後退翼状態にかけて周期的に変化させる「フェザリング・ヒンジ」のみで構成され、他の関節部を持たない)を用いた二重反転式ローターを採用しており、上下に配置された各々の回転翼の前進側の羽根だけで全ての揚力を生み出す(後退側は揚力を発生させないようにして利用しない)形式であり、後退側の逆流や失速による左右の揚力バランス喪失を解決し、高速飛行が可能な機体となっています。

 今回のコンセプト案を見る限りS-97 Raiderの機体と非常に似ているように見えますが、見た感じでは機体表面の突起物等が無く、ステルス性や高速飛行性に力を入れていることがわかります。機首下面の20mm機関砲は未使用時は機体内部に収納されるようなデザインとなっていますし、メインローターのマスト部分もシュラウド(カバー)も角度がつけられ、エンジンインテイクもV字の形が採用されています。

エンジン排気に関しても、RAH-66コマンチ で採用されたようなテールブーム内で冷却し排出する方法が取られているように見えます。

また機首からテールブームまで機体のサイドにはいったライン筋もRAH-66コマンチ を彷彿させるデザインとなっています。

この辺り、どこまでステルス性があるのか等はコンセプト図を見るだけではわかりませんし、コンパウンドヘリコプターがどれだけステルス性を達成できるのかは、疑問です。しかし、スピード、低視認性、低赤外線シグネチャ、低RCSを求めていくとクリーンな機体で、RAH-66のシルエットに近づいていくのは自然なことに思えます。

ベル社はの機体コンセプトBell 360 Invictus「インビクタス」も、LMT/Sikorsky社の「RAIDER X™」も「Low-risk」「Low-Cost」「Lower Acquisition Cost」などをアピールしています。Low-riskという点では、コンパウンドヘリコプターのような複雑で制御ソフトウェアの複雑さよりも、典型的なヘリコプタースタイルで提案してきたBell社の方がまさっているようにも見えますが、私が信じる戦闘ヘリコプターの未来で、従来のスタイルのヘリコプターに需要はあまり感じれないとも思います。(以前の記事)

リスク、コストも大事ですが、やはり飛行速度と航続距離、生存性が一番優先される能力と思います。このFARAプログラムが今後どのように進んでいくのか引き続きアップデートしたいと思います。

参考動画リンク:

参考リンク:
https://news.lockheedmartin.com/2019-10-14-Sikorsky-Introduces-RAIDER-X-TM-a-NextGen-Light-Attack-Reconnaissance-Helicopter-Based-on-its-Proven-X2-Technology