カレム・エアクラフト社(Karem Aircraft社)はAUSA2019展示会で米陸軍の将来型攻撃偵察機(FARA:Future Attack Reconnaissance Aircraft)プログラム向けの機体コンセプト「AR40」を公開しました。
コンセプト機「AR40」は、陸軍が市街地での戦闘を考慮して40平方フィートに収まるサイズを要求していることから”40-ft. Active rotor”を略した名前となっているようです。
機体構成は、メインローターが3枚のアクティブローターで構成されており、胴体左右にFARAプログラムコンセプト機では最大と思われる翼、スイベル式のテールローターを採用したコンパウンドヘリコプターです。
メインローターの直径は11mで、Karem社のOSR-Optimum Speed Rotorテクノロジーが採用されています。直訳で最適速度ローターですが、アクティブコントロールローターとも呼ばれており、垂直飛行と水平飛行時とでローターのスピードを減速機で調整することによりローターを推進に最適な状態にコントロールする技術が採用されるようです。
通常のヘリコプターのメインローターは、操縦席のサイクリックとコレクティブの入力がスワッシュプレートとピッチリンクを通してローターヘッドに伝えられます。しかし、カレム社のOSR/アクティブローターはそれぞれのメインローターブレードがハブに埋め込まれた電気アクチュエーターで独立して制御されます。その為、従来のピッチリンクで一括で動いていた「コレクティブ」な動きからそれぞれのブレードが独立して精密に動くことで、飛行状態に合わせた最適な角度にコントロールされ、効力を最低限にし、高速時の振動を抑えることが可能となっています。また、この電気アクチュエーターの動力は機体から供給するのではなく、ローターハブで発電されるということで、機体から回転するローターへ電気接続が不要とのことで、高い生存性にもつながると思います。このような機構から、メインローターはリジッドタイプ、ヒンジレス・ハブとなっており、スワッシュプレートとピッチリンクが不要となる為、胴体とロータマスト付け根部分を非常にコンパクトにすることができ、機体の抗力低減に寄与しています。
このアクティブコントロールのメインローターはまた開発途中の技術ですが、カレム社は同様の技術を採用した他のコンセプト機体にも採用しており、FLRAAでUH-60ブラックホークの後継機種へTR36 OSTRという名前のコンセプト機体をデザインしています。
テールローターに関しても「スイベル式」で、低速時は従来のアンチトルクの役割をし、高速飛行時では後ろ向きにスイベルする事で推進力を発生させることができるようです。
機体表面も非常にスムースで、ターゲットタレットや武装関係は全て機内に格納することで低ドラッグの機体となっています。
コックピットは前後に座るタンデム式ではなく、クルーが左右に座ることで、クルーのコーディネーションを最適化し、コクピット後部に「フリースペース」を確保することで、ミッション用装備を搭載したり、乗員のためのキャビンとすることも可能のようです。
AR40のコックピットとアビオニクスはNorthrop Grumman Mission System社、ミッションシステムはRaytheon社が担当するようです。もし来年春に選定される2社にカレム社が選ばれた場合には、機体の製造はScaled Composites社は請負うと思われます。