ロボット vs 人 777X製造ライン

 数ヶ月前から業界内では噂になっていましたが、Bloomberg誌で取りあげられましたので、私も追っかけメモ。(シアトルタイムズ誌でかなり詳しく書かれていました。)

今回は737MAXネタではありません。

今回は、ボーイングがロボットによる777/777Xの胴体用リベッティング&ファスニングシステムの一部を諦めたというものです。(リベッティング=打鋲)

777等の機体は、先ず胴体パネルを組合せトイレットペーパーの芯のような筒を数個のセクションごと作ります。これを各セクションつなぎあわせて長い機体胴体を作り上げるのですが、これを今まで作業者のマニュアル作業で行っていました。これまでは作業者が手工具で一機あたり60,000個のリベット作業を行っていました。

ボーイングではこのシステムをFuselage Automatic Upright Build(FAUB)というシステムに置き換えることを目指していました。これはタンデムに配置されたロボットアーム(KUKA製)が、機体に穴開け作業を行い、胴体パネルをリベットでかしめる作業を行うというものです。このロボットをインテグレートした会社はAdvanced Integration Technology(AIT)というメーカーです。

しかし、胴体パネルの内側と外側に配置されたそれぞれのロボットアームが同期/シンクロさせることに苦労したようで、2016年当時の記事では、既存777の胴体結合に採用したものの、機体表面への傷など、多くのリワークが発生し、逆に作業者に多大な残業を強いるハメになりました。今回の採用見送りも、類似問題が発生していたことが原因のようです。

777Xの機体がローンチされた2013年前後に、ボーイングでは従来の作業者による多くの作業をロボットに置き換える試みを始めました。ボーイングが行っている自動化は「Black Diamond」というコードネームで知られ、この胴体結合はその自動化プロジェクトの一部です。ですので、今回この自動化の一部を諦めたというだけで、その他に多くのプロセスが引続き自動化するトライが継続されます。

このプロジェクトは777Xで自動化をトライし製造プロセスを改善するという目的と、その後の新型機開発(NMA等)で標準化して行くことがゴールかと思います。

FAUBに関して諦めるということで、機械と人が共同で作業するスタイルを採用することになります。今後は「flex tracks」という胴体結合部に取付けられたレール上を動くドリル装置が開けた孔に、作業者がファスナー/鋲を挿入して行く方法が取られます。このflex tracksは787で採用された実績がある方法です。こちらの装置はシアトルにある会社でElectroimpact社が開発したものです。

FAUB vs 人。病気、疲れ、空腹にならない自動化・ロボットという機械化された労働力と、人が持つ器用さ、創意工夫、精度との戦いですが、今回は人が一本とったようです。

10月にエアバスのハンブルグの工場でA321の胴体結合の自動化のビデオが公開されましたが、エアバスも同じシステムを使用しており、動画で見る限りエアバスでは今のところ順調に動いているようです。

ボーイングにとってFAUBを含むBlack Diamondプロジェクトの経験は、今後開発していく新機種(NMAやFSA)の設計製造プランに反映していかなければならないものですので、FAUBの見送りはプラスにはなりません。しかし、今のところ737MAXの問題や、777Xの開発遅れ等、解決しなければならない問題が山積みであり、新機種に関しては逆に時間的余裕ができたということでしょうか。。エアバスにできてボーイングにできない原因等が今後調査されると思います。(エアバスも今後問題が出てくるかもしれません。)

ロボットが製造することを念頭に設計されていない機体に導入するという難しさもあるのでしょうか、何か興味深い記事を見つけたら引続きアップデートします。

導入当初のFAUB紹介動画(Boeing Video on YouTube)↓

参考記事リンク:
https://www.bloomberg.com/news/articles/2019-11-13/boeing-s-humans-step-in-after-robots-fumble-assembly-of-777-jets
https://www.seattletimes.com/business/boeing-aerospace/boeings-struggle-with-777-assembly-robots-adds-to-everett-production-snarl/