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電子戦機(2) – 電子戦機の今後 と日本の電子戦能力

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(2) – 電子戦機の今後 と日本の電子戦能力

ー電子戦攻撃機の今後ー
米海軍が取得するEA-18G グラウラーは当初90機でしたが、空軍が陸上配置の電子攻撃機の採用を見送ったため、160機を海軍が用意する結果になりました。

過去10年以内に配備されたということもあり、海軍機の中で機齢も若く、5000時間以上の飛行時間を各機体が有していると見られますので、Block IIへのアップグレードは確実に行われるものとみられます。しかし、その後に関しては不透明です。

この電子戦攻撃というコンセプトも、味方、敵両サイドのテクノロジー進歩で、非ステルス機で有人電子戦攻撃機であるEA-18Gグラウラーの必要性と能力に関して将来性に疑問符がつきます。その主な要因として:
・ F-35の出現
・ スタンド・オフ兵器の導入
・ 高出力化
があります。

F-35の出現
航空自衛隊にも現時点で合計147機が導入される予定ですが、F-35Aには自ら電子戦攻撃能力を持つとされています。特にF-35Aが搭載するアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーAN/APG-81は電子戦支援(ES)と電子攻撃(EA)の機能を兼ね備えており、最新のソフトウェアへアップグレードすることで、常に最新の電子攻撃能力が備わっている戦闘機となります。

スタンド・オフ兵器の導入
先日のブログでも紹介しましたが、日本が導入することを決定したJSM(Joint Strike Missile)をはじめ、JASSM(Joint Air-to-Surface Standoff Missile)、LRASM(Long Range Anti-Ship Missile)といったスタンド・オフ・ミサイルの導入も、非ステルス機で有人電子戦攻撃機であるEA-18Gグラウラーの必要性と能力にマイナス要因となります。これらの兵器は長距離攻撃能力を持った兵器で、兵器自体もステルス性能を有しているものもあり、敵の脅威圏外からの攻撃を可能にしています。
このようにF-35などのステルス機が、スタンド・オフ兵器を搭載した組み合わせは、グラウラーのような電子攻撃に特化した航空機の必要性が無くなる、極端なところで、脅威となる相手レーダーを無力化するということ事態が不要になる可能性もあります。

高出力化
また、高出力のレーダーに対して、スタンド・オフ・レンジでジャミングするには、高出力のジャミングが必要となり、EA-18Gグラウラーで使用する懸架型のジャミングポッドではない、高出力専用の機体が適していると考え方もあります。
このような場合は、中大型機の機体を改造したスタンド・オフ電子戦機を使用するという選択肢も出てくるでしょう。
<2019年9月3日更新>
防衛省は8月30日、2020年度予算の概算要求を発表し、「スタンド・オフ電子戦機」の開発費207億円などを計上しました。イメージ図では川崎重工(KHI)製輸送機C-2に電子戦改修キットを施したイメージが使用されています。

令和2年度概算要求の概要(P-11) 防衛省資料

総額は過去最大の5兆3223億円で、19年度当初予算比1.2%増。概算要求段階で7年連続の増額となっており、最終的に8年連続の増加予算となる見込み。
<更新終わり>

以上、EA-18G Growler Block IIアップグレードのニュースと、どのような技術が現在あるのか、各種資料からまとめてみました。また電子戦攻撃という分野で、非ステルスで有人電子戦攻撃機であるEA-18Gグラウラーの必要性と能力に関して、ステルス機やスタンド・オフ兵器の存在がどのように電子戦機の未来を変えるのかについてまとめました。

ー日本は?ー
防衛装備庁のホームページにも掲載されていますが「戦闘機搭載型電子防御装置」というものを三菱電機が主契約会社として、平成20年から25年まで開発が行われています。複座型F-15DJ型戦闘機に搭載し、航空阻止、支援戦闘等を実施する戦闘機及び自機等に指向する脅威レーダからの防御を行う戦闘機搭載型の電子防御装置です。編隊防御用電子妨害装置(エスコート・ジャマー)という種類です。
装置は戦闘機用センタータンクに収まるサイズでアクティブ・フェーズド・アレイ・アンテナの素子が使用され、高出力で複数のレーダーへの同時妨害が可能とされています。今の所、装備化はされていませんが、F-15の機体だけでなく、この技術をベースに大型の機体に装備するアップグレード計画があってもいいと思います。

2018年12月に決定された中期防衛力整備計画(平成31年度〜平成35年度)の中で
「我が国に対する侵攻を企図する相手方のレーダーや通信等を無力化し得るよう、戦闘機(F-35A)及びネットワーク電子戦装置の整備並びに戦闘機(F-15)及び多用機(EP-3及びUP-3D)の能力向上を進めるとともに、スタンド・オフ電子戦機、高出力の電子戦装備、高出力マイクロウェーブ装置、電磁パルス(EMP)弾等の導入に向けた調査や研究開発を迅速に進める。」
「近代化改修を行った戦闘機(F-15)について、電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイルの搭載、搭載ミサイル数の増加等の能力向上を行う。」
とあり、相手レーダーや通信等の無力化のため、装備品の研究開発や整備を推進することが記されています。
既に電子偵察機型に改造された機体がありますが、同様に航空自衛隊の輸送機「C-2」や海上自衛隊の哨戒機「P-1」に電波妨害装置を搭載した型を開発すると思われます。
国産でも開発は行い、同時に(アメリカも輸出に前向きとのことですので)EA-18Gグラウラーの導入となるのでしょうか。何かニュースがあればアップデートしていきます。

最後まで読んで頂き有難う御座いました。

終わり

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参照資料:
「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)」https://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/guideline/2019/pdf/20190426_190509.pdf

Military_MaterialによるPixabayからの画像