ドイツ航空宇宙センター(Deutsches ZentrumfürLuft- und Raumfahrt; DLR)とミュンヘン工科大学(TUM)のコラボレーションにより、研究者は軽量でありながら非常に安定した翼のための新技術の開発に成功しました。この革新的な翼設計を応用することで将来の航空機の飛行は、環境に優しく、安価になることが期待されています。エアロエラスティック翼(空力弾性翼(?) – aeroelastic wing)実証機は、11月19日にオーバープファッフェンホーフェン空港で最初の飛行を行いました。
翼スパンが長く、重量が軽い翼は抵抗が少ないため、エネルギー効率が高くなります。揚力発生をより効率的にすると、燃料消費量が減り、排出量とコストが削減されます。
しかし、このような翼の構造を制限する要因は、フラッターという空力現象です。強い風になびく旗のように、翼の振動は抵抗と風の突風によりますます強くなります。 フラッターは、材料の疲労を引き起こし、胴体への翼の取り付け部分が破壊される可能性があります。
どんな翼も、ある一定速度に達するとフラッター現象が起き始めます。その為、翼を短くし、構造材を分厚く作って剛性を上げることで、フラッターを抑え安定性を高めることができます。同じように安定して堅牢で、より長いスパンを持つ翼を作ろうとすると、翼はより重くなります。
翼同様、すごく長い名前ですが、「European Flutter Free FLight Envelope eXpansion for ecOnomical Performance improvement (FLEXOP) 」プロジェクトで、6か国の研究者が集まり、フラッターを制御しつつ翼重量を軽くする新しい技術に取り組んでいます。
風を避ける翼
TUMの研究者は、プロジェクトによって開発された2つの新しい翼(空力弾性翼とフラッター翼)の設計と実際の動作を実証する飛行試験を担当しています。 TUMチームは最初に、長さ3.5メートル、幅7メートルの飛行実証機を組立、ヨーロッパの各パートナーが提供するさまざまなシステムを統合しました。現在初めて飛行された特に軽量の翼は、CFRP材で作られた空力弾性的に最適化された翼です。デルフト工科大学と共同で、ゲッティンゲンのドイツ航空宇宙センターによって開発されました。研究者は、翼を製造する際に繊維方向の向きに関して、特別な配列を採用することで、翼の曲げとねじれの挙動に影響を与えることができました。空力によって翼が曲げられると、翼は同時に回転し、それによって気流による負荷を軽減させるというものです。
TUMの研究者は、事前に比較用の翼を使用た実証機が事前に定義された飛行テストパターンを自動的に飛行するようにし、それに基づいて最適な設定を考案し、飛行試験用のマニュアルとチェックリストを開発しました。空力弾性翼を取り付けた実証機は、付けていない翼だと理論的にフラッターする翼よりも速く飛行できるかを確認するためです。飛行データは今後解析されます。
「フラッター翼」のアクティブダンパー制御
プロジェクトで開発されたもう1つの超効率的な翼は「フラッター翼」です。これはTUMデザインで、ファイバーグラスでできています。フラッターが発生すると、最も外側のフラップが伸び、これがダンパーのように機能します。この「アクティブフラップコントロール」は、はるかに軽量な翼設計の可能があると考えられています。 この飛行制御システムは、ハンガリー科学アカデミーのコンピューター自動化研究所(MTA SZTAKI)によって開発されています。 MTA SZTAKIのプロジェクトマネージャーBálintVanek氏は、この翼により貨物搭載量を20%増加させ、燃料を7%削減できるとみています。この技術は特に複雑であるため、飛行試験は後日行われます。
この2種類の超高効率翼は、ゲッティンゲンのDLR研究所で静的振動試験を既に実施しています。
デモンストレーターから旅客機まで
この試験中の翼は実証機でのみ使用されるわけではなく、今後のステップとして、プロジェクトで得られたデータを輸送機および旅客機に適用していくことが計画されています。
パートナー
EU FLEXOPプロジェクトのパートナー:ハンガリー科学アカデミー、エアバスグループイノベーション、エアバスグループリミテッド、FACオペレーションズGmbH、統合航空宇宙科学コーポレーション(INASCO)、デルフト工科大学、ドイツ航空宇宙センター(DLR)、ミュンヘン工科大学、ブリストル大学、RWTHアーヘン大学。
参照リンク:
https://www.dlr.de/content/en/articles/news/2019/04/20191119_super-efficient-wings-take-off.html