今後10年間で16機種程の旅客機がデビューし、航空会社に引き渡されていく予定です。
(ボーイングがNMAをローンチするとした場合です。)
それぞれの年にどの様な機種が予定されているのか整理してみます。
因みに、航空ニュースを見ているとEISという言葉が出てきます。これはEntry Into Serviceの頭文字を取ったもので、新しく開発した航空機が客先に初めて「納入」「引渡し」され、商業飛行のための「運用開始」される時期を表す言葉です。
2019
今年の引渡しを予定していた飛行機はエンブラエルE195-E2と737MAX-7です。
E195-E2に関しては納期に関する問題はニュースにはなっていません。先日はPRツアーで日本にも立ち寄っていましたね。
737MAX-7に関しては、サウスウエスト航空向けの機体は完成していますが、737MAXが全機飛行停止中の為、当分の間引渡しはなさそうです。737MAXの飛行停止が解かれても、先ず優先されるのは、これまで既にエアラインで使用していた381機のMAXを現場に復帰させることで、その後に新造機の引渡しが行われるものと思われます。MCASソフトウェアの機体へのダウンロードや、飛行制御装置の改修やマイクロプロセッサの交換作業などが必要になる可能性がありますので、かなりの作業が待ち受けていると思われます。飛行停止中の期間も生産レートは落としたものの、月産42機製造していますので、年末には400機弱の機体が引渡しを待った状態でシアトルの工場に「溜まっている」状態になります。この為、737MAX-7引渡しは2020年となりそうです。※月産52機から42機にレートダウンしましたが、2020年には57機になるよう徐々にレートアップしていくようです。
2020
737MAX-7の引渡しに続いて、737MAX-10の引渡しも2020年に行われるのではないかと思います。2020年にはMCAS関連の修正が反映済みの機体が最初から製造されると思われますので、ボーイングは今年の「溜めた」分を一気に解放できるはずです。
昨年10月に初飛行したAirbus A330-800neoを2020年に引き渡し予定です。今のところ特に大きな問題は出ていません。受注数もクウェートとウガンダからの10機程度ですので、引渡しの時にニュースに取り上げられれば良いですが。。。
三菱重工のMRJ90に関してもこれ以上の延期は無いとして、2020年に引渡しが予定されています。
初飛行が延期となっている777Xですが、先日地上滑走を行なった様子がニュースになった777-9。当初の予定は2019年上半期初飛行、2020年に引き渡しとなっていましたが、GE GE9Xエンジン再設計の必要があることから、修正されたエンジンが用意できるのが年末とみられることから、初飛行の日程はそれ以降となります。やはくても年末ー2020年始ごろと思われます。それから試験飛行が行われるわけですから、2020年度中の引渡しは微妙なところではないでしょうか?
特に、737MAXの事故を受けて、FAAを始め航空当局の認証作業がより厳格慎重に行われることが予想されますし、MCAS以外でエレベーターのコントロールに問題があった件は、これまでの認証プロセス自体に、“クリーン”ではないやり方が有ったのではと疑ってしまうものでした。この様な事から、当初のスケジュールより時間がかかると思われます。
2021
上記の通り777-9の引渡しが年始に行われると思われます。
ロシアからはMC-21の引渡しが予定されています。3月にテスト用の3号機が初飛行し4号機も最終組み立て中と見られ、更に2機をテストに投入すると7月上旬のロイターニュースにありましたが、欧米からの経済制裁のなか順調に2021年に引渡し出来ないとしても驚きではありません。
中国商用飛機有限責任公司 (Comac)C919もこの年の引渡しを予定していますが、フライトデッキの設計に不具合があり、FAAやEASAの認可を受けることが難しい状況の様です。欧米メーカーがシステムを提供していますが、中国企業との合弁が条件となっており、最終的なインテグレーションは中国企業が行うことになっていますが、経験値と組織力の両面で問題を抱えている様です。引渡しが2022年にスライドする可能性は十分あります。
エンブラエルE175-E2も2021年に引渡し予定です。機体は問題無く間に合いそうですが、問題は確定注文が無く、引渡し先がないという状況です。米国のスカイウェスト航空が100機の仮発注をしていますが、”Scope Clause”で定められた重量を超えている為、購入したとしても運用できない状況です。”Scope Clause”の縛りがない米国外のユーザーに売り込みをしていますが、現時点で受注はありません。
2022
上記の機体がスライドしてこない限りは、今年に引渡しを予定している機体はありません。
777-8が予定されていましたが、現状777-9プログラムが遅れていることもあって、777-8は客席が少なくし、航続距離を伸ばしたタイプですが(777-8は約16,100km、777-9は約14,000km)、その必要性自体を疑う声もあり、プログラムがローンチされない可能性もあります。
2023
2019年パリエアショー で226機を受注(確定、覚書/Firm, MOU & LOI)したAirbus A321XLRは2023年の引渡しを目標にしています。4年後ということもありますし、現在エアバスはサプライチェーンで問題を抱えていますので、この年以降にずれる可能性は十分あるでしょう。
三菱航空機のM100 SpaceJetもこの年の引渡し予定です。これまでの納期遅延の歴史から、遅れたとしても特に驚きません。
2024
ドバイのエミレーツ航空は150機の777Xを発注しており、これは現時点でボーイングが受注している334機の4割となります。その内35機が777-8、残りの115機が777-9です。この発注に関しては5-6月に発注内容を見直すとのニュースがあり、予想では一部を787-9に置き換えるというものです。その場合、恐らく777-8が対象となる可能性があります。
これに加えて、2019年パリエアショー で777-8のローンチカスタマーの一社であるカタール航空が777-8の貨物機タイプ777-8Fに関してローンチカストマーとなることに言及していました。エミレーツ航空が777-8を787-9にスワップした場合、エミレーツも同様のアクションを行う可能性があります。ローンチカスタマーの一社であったエティハド航空も、今年初め財政上の問題で当初発注した26機を6機に変更しています。
この様に777-8は超長距離航続性能をアピールしていますが、その需要が無く、エアラインからの受注に苦しんでいます。この場合、ボーイングが旅客機タイプの777-8よりも貨物機タイプの777-8Fを先にローンチする可能性があります。上記を考慮し、2024年に引渡しと予想します。
2025
上記の通り777-8のオーダーがあれば、この年となるのではないでしょうか?
ボーイングがNMAをローンチした場合、引渡しは2025年となっていますが、エンジンが間に合わないでしょう。
2026
予定されている機体はありません。
2027
中国とロシアが共同開発するC929はこの年の引渡しを予定しています。
エンジンが順調に開発された場合、NMA-7が引渡し可能な時期は早くてもこの辺りではないでしょうか?
2028
予定されている機体はありません。
2029
NMA-7よりも客席を減らし航続距離を延ばしたNMA-6が引き渡されるのはこの年あたりではないかと思われます。