米中両国は15日、包括的な貿易協定の第1段階と双方が位置付ける合意にホワイトハウスでトランプ大統領と中国の劉鶴副首相が署名しました。
合意文書には、中国の企業および政府機関による米国の技術と企業機密の窃取に対し中国側が取り締まりを強化するとの公約のほか、対米貿易黒字の縮小に向けた中国による今後24ヶ月間で2000億ドル(約22兆円)相当の追加購入計画の概要などが盛り込まれています。
貿易優位性を得るため為替操作を中国が控えることや、合意を確実に履行させる制度も合意文書に明記され、過去に行っていた経済対話も再開させます。
米国が中国からの輸入に課している関税の3分の2程度は維持され、中国が一層の改革に応じるまで重要な取引材料として温存する考えです。
「妥協の産物」との見方もある今回の内容ですが、無いより良いと言ったところかもしれません。
15日に公表された合意文書によると、中国が2021年12月までの2年間で追加購入を約束したのは航空機を含めた製品777億ドル相当のほか、農産品320億ドル、エネルギー関連524億ドル、サービス関連379億ドルと第1段階合意は中国が極めて幅広く購入を公約しました。
航空機を含めた製品777億ドルに関しては、1年目が329億ドル、2年目が448億ドルとなっています。これには航空機以外に、航空関連の設備機械や電気設備等も含まれますので、アメリカにとってはボーイングをはじめ航空関連の企業にとってはウェルカムなニュースでしょう。
中国はボーイングにとって非常に重要なマーケットですが、近年の状況はあまり良いものではありません。
中国からのまとまった航空機の発注は2017年11月にトランプ大統領が中国を訪問した際に、China Aviation Supplies Holding Company (CASC)社から300機の発注を受けたのを最後に途絶えています。当時、この300機はシングル・アイルとツイン・アイルの小型・中型旅客機となっていました。その後、貿易戦争が始まり、昨年3月にはChina Aviation Supplies Holding Company (CASC)社はボーイングのライバルであるエアバスへ300機発注しています。
また、中国は737MAXが二度の墜落事故を起こした後に、飛行停止処置を世界の航空当局の中で一番最初にとりました。
エアバスvsボーイングでみると、現在中国で「運用中の旅客機」と「中国が発注した旅客機」の両方でエアバスが勝っています。エアバスの機体は1,815機に対して、ボーイングの機体は1,695機が運用中で、発注機数に関しては、エアバス341機に対して、ボーイング285機となっています。
中国からの機体発注が無い事が大きなファクターとなり、ボーイングは昨年10月に787の生産レートを2020年末から現場の月産14機から12機へと減産することを発表しています。