米国国防総省の2020年予算要求について情報が出てきました。(https://comptroller.defense.gov/Budget-Materials/ )
航空機の部分では、F-35、KC-46、F/A-18E/F、CH-53K、F-15EX等々、新型の航空機がたくさんリクエストされています。最後のF-15EXは色々と議論を呼んでいるようでが、F-35だけという状況から、ハイローミックスの機種にすることで、作戦即応性と費用&維持費低減を達成するという目的のようです。
今回は、その中で海軍の要求に含められていた22機のF-5タイガー戦闘機について書いてみようと思います。
なんと、それも価格が$40Million(44億円ほど)なので、1機@1.8million(2億円)!
F-5とは?何故?みたいなところから。
結論から言うと優れた飛行機で安く維持しやすいから、、、です。
米軍には(日本の自衛隊にもありますが、)仮想敵役をする部隊があります。通称「アグレッサー」と呼ばれていて、軍のエリートパイロットがその役を務める部隊です。
映画「トップガン」でも出てきましたね。いや、もうそのトップガン見ていただければ、もう書くことはないのです。。。
この映画の中でF-5E(F-5N)/Fがソ連軍の架空機「MiG-28」として登場しました。(ちなみに、この時の映画に出た機体の1機は、今も当時の映画のカラーリングのままで使用されています。)
このF-5戦闘機はアメリカ合衆国のノースロップ社が1950年代に開発した戦闘機で、原型の機体は初飛行が1959年7月30日(F-5A)、改良された機体(今回購入する話の機体)は1972年8月11日(F-5E)に初飛行しました。
愛称はA/B型がフリーダム・ファイター(Freedom Fighter)、改良型のE/F型はタイガーII(Tiger II)と呼ばれています。
開発元のアメリカの他、小型軽量で取得や運用も容易であったため、冷戦当時にアジアやアフリカ、南アメリカなどのアメリカと友好的な発展途上国にも大量に輸出された。姉妹機として、練習機型のT-38 タロンが存在します。
でも、F-5の購入が改めて驚きなのは、海軍のアグレッサー部隊でF-16が使用されているため、今後はF-16の中古機を使用するのかな?と勝手に思ってしまっていた部分があったからです。F-16はソフトウェアの書き換えで、色々な戦闘機の動きをシミュレートできるため、仮想敵機役として非常に優れていると読んだことがあります。F-5と比べても機動性は別世代の機体でしょう。
やはりそれでもF-5であると言うことは、やはり、この飛行機が安価で、小国や、国防費にお金をかけれない国のために設計された機体で、シンプルな構造=整備性の良さが、F-16と言う機体と比べると段違いにいいのでしょう。恐らく、F-16の中古を購入したとしても、維持費は倍近く違うと思われます。
それ以外で、F-5がF-16(初期型ですが)に優っているのは、RCS(レーダー反射断面積)かと思います。
今回購入するのはスイス空軍が80年代にライセンス生産していたもので機齢は数千時間とまだ余力があるのでしょう。
実はアメリカは以前も同じように購入しました。現在使用されている44機も以前にスイスで使用されていたものです。
購入後は、恐らくノースロップ・グラマン社の米フロリダ州セント・オーガスティン工場で整備作業を受けることになるでしょう。恐らく、海軍のプランとしては、今回購入する機体にも手を加え、新しい電子機器、データリンクシステム、レーダージャミング能力等を加えることで、F-5Nのレベルにアップグレードするのだと思います。
このようにアグレッサー部隊の機体を増やす必要があるのは、米海兵隊のF-35の取得も関係しています。これまで海兵隊で使用されていたAV-8ハリアージェットが、今後F-35に切り替わっていきます(およそ100機ほど)。そうなってくると、これまでハリアージェットの対地攻撃のミッションに、F-35の優れた空対空能力を活かしたミッションへの訓練をする必要があります。要するに対戦闘機の戦闘訓練です。その為、F-35の能力を最大限に引き出せるよう、アグレッサーとの訓練が今後必要になっていきます。(昔の第四世代の古い戦闘機と戦闘訓練する意味は?って思いますよね?その重要性は、以前に書いた記事とも関係します。今度の記事のネタにしたいと思います。)
増やさなければならない理由のもう一つは、すでに保有しているF-5の老朽化です。特に、機体のコクピット周りのロンジロン(特に上面の縦通材)、主翼、尾翼、垂直尾翼などが設計寿命に近ずいていると言うことも理由に挙げられ、延命処置が行われています。
ですから、機数を増やす事で飛行時間を振り分けることで、少しでもアグレッサー部隊全体の寿命を伸ばしていきたいと言うところでしょう。
スイス空軍はまだ機体年齢に余裕のあるF-5を2018年も27機ほど退役させましたので、それらも米軍に販売される可能性あります。
ちなみにアメリカには民間のアグレッサーサービスを提供する企業もあります。民間の企業が戦闘機をアメリカ軍に対して敵役で飛ばし、訓練のサービスを行うものです。これらの企業も軍の放出品のF-5を購入しようとしています。そんなところでもこの戦闘機の取り合いが起きているとは、、、人気者で、扱いやすくて、安い!そんなF-5戦闘機のお話でした。
(F-15EXについてもと思いましたが、いっぱい記事出てるし、また別の機会に書きます。)
終わり