ボーイングは1月末に2020年通期決算及び第4四半期決算(2020年9-12月)を発表しました。この中で787に関しては生産レートを今年3月から月産5機化することを表明しています。従来は今年6月頃に月産5機とする見通しだったが、減産計画を前倒しする形です。
これにより、3月の段階で米国ワシントン州エバレット工場にある787の最終組立ラインは閉鎖されることになり、サウスカロライナ州のノースチャールストン工場に早々と統合されることになります。
ボーイングの787プログラムでは、日本の航空機産業界は機体の35%を製造するワークシェアを有しており、Tier1パートナー・サプライヤーとして、三菱重工は主翼ボックスを、川崎重工は前胴部・中胴下部構造・主翼固定後縁、SUBARUが中央翼を担当。さらには新明和工業、東レ、島津製作所など多数の企業が参画しています。このためボーイングの減産は日本の航空機産業をしばらくの間苦しめるものとなります。
更なる減産の可能性も
ボーイングは2020年中に53機の787を引き渡しました。年間53機は月当たり4.4機となります。秋頃に計画していた70機には到達できませんでしたが、これは品質管理の問題が大きく影響しています。ノースチャールストン工場の品質管理は長年ボーイングを悩ませている問題です。
これらも影響し、ボーイングには787の在庫が70機ほど駐機した状態です。通常は10−15機を抱えた状態ですから異常な事態と言えます。2021年と2022年はボーイングがこれらの機体を引き渡すことに注力する期間となりますので、今回の月産5機のレートダウンが決まったというわけです。今年78機来年76機の引渡が計画されています。レート5機を考えると、2023年にも通常よりも多い機体を在庫として抱えた状態となることがわかります。
現在の世界の旅客状況を見ると長距離路線の回復は時間を要するとみられますから、エアラインが787の受入れを急がせる可能性は極めて低いと思われます。そのためボーイングが在庫として抱えている機体をクリアするためにも787の更なる減産を予想することは難しいことではありません。
ボーイングが引渡す機体数が増えるは2023年ぐらいからと予想され、2025年には年間100機前後を引き渡せるのではと予想します。在庫機体が無くなった2026年には引渡数がいっきに減少するでしょう。