先日の記事で、水上飛行機の航空会社として北米最大のHarbour Air社が世界初の商業電動飛行機によるフライトを成功させたニュースを取り上げました。素晴らしいことだと思いますし、電動化が可能な分野で進んでいくことを願っています。
短距離で水上機というのは採用し易い機体なのかな?とも思いました。電動(Electric)のEで”ePlane”のような新しい飛行機や、ドローンなどが開発されていますね。
ただ、航空機の分野で電動化というのは車でも電動化が流行っており、その流れを直で採用しようというアイデアで素晴らしいですが、航空機に採用するには様々なリスクがあります。航空機電動化は現在、ハイプ・サイクルの最初のピーク部分にある状態で、過度の興奮や誇張のステージにいます。今後、幻滅期(Trough of Disillusionment)を過ぎて、本当の進歩があり回復期へと向かうのですが、これには技術と法律の分野で長い年月を必要とするでしょう。
既存の機体のシステムをより環境に優しいEnvironmentの”E”である”ePlane”についても、まだまだ可能性があり、航空機の世界では始まったばかりといえます。
787で複合材の使用拡大をおこなったのは構造・材料の軽量化につながりましたし、これにより疲労による強度低下が少なく、腐食しないことから整備費用の削減のメリットもあります。(もちろん修理方法など課題もありますが、、、)
また、システムの軽量化も取り組まれており、油圧システムの高圧化で油圧配管を細くすることで作動油を少なくし、システムの軽量化が図られています。また、電動式のアクチュエーターも開発されています。
このような取り組みは”More Electric System”と呼ばれていて40年以上前から提唱されてきたもので、その一部が10年前に初飛行した787で数多く採用されました。ですから、環境に優しい航空機というのはまだまだデビューしたばかりで、”More Electric System”は今後より多くの機体に採用されると思いますし、新たなアイデアが生み出されていくと期待しています。
もちろん、車の排出する排ガスと比べると航空機の排ガス量は、化石燃料の燃焼による全世界の排出ガス総量の約2〜3%で、環境に与える影響は車ほどではありませんが、無視は出来ませんよね?
以上、電動化のニュースから思ったことでした。
因みに、今回電動化された機体は、プラット・アンド・ホイットニーR-985 ワスプ・ジュニア星形空冷ピストンエンジンが付いていました。こんなエンジンがついた機体は日本で飛んでいませんが、ピストンエンジンの機体は沢山飛んでいます。
セスナ社のSkyhawk(172)にはライカミングIO-360-L2Aエンジンが採用されていますが、このエンジンスペックと、族車で一番人気のホンダ・CBX400FのNC07E型エンジンを比較してみましょう。
ライカミングIO-360-L2A | ホンダ・NC07E型 | |
エンジン型式・冷却方法 | 空冷水平対抗4気筒 | 空冷直列DOHC4気筒 |
ボア | 5.125 in (130 mm) | 55.0(mm) |
ストローク | 4.375 in (111 mm) | 42.0(mm) |
排気量 | 361 cu in (5,916 cc) | 399cc |
エンジン重量(ドライ) | 258 lb (117 kg) | 不明(バイク重量173 kg) |
燃料(種類) | 91/96 avgas min grade | レギュラーガソリン |
エンジン潤滑方式 | ウェットサンプ式 | ウェットサンプ式 |
圧縮比(:1) | 8.5 | 9.8 |
最大出力 | 180 hp/2700 rpm | 48ps/11,000rpm |
燃費 | 7.8 US gal (30 L) to 9 US gal (34 L)(1時間辺り) | 40/L(60km/h走行時 ) 通常空ぶかし等で15/L前後 |
航続距離 |
1,185 km | 680 km |
燃料タンク容量 |
201 L (53 gal) | 燃料タンク17L |
座席数 | 4 | (通常2名)乗り方によって4名可 |
エンジン排気 | ほぼ直管 | 直管 |
操縦者特徴 |
免許保持者・ノーヘル | 無免許・免許取得者・ノーヘル(近年はヘルメット着用者が増加) |
ファッション |
普段着・カジュアル | 特攻服(近年減少傾向にある) |
エンジン排気量だけでいくと、セスナSkyhawk(172)1機で、ホンダCBX400F 15台分となります。
暴走族に人気だったホンダCBX400F。暴走族構成員の数がピークだった1982年は712グループあり、当時1グループ平均60人弱でした。2002年には構成員数が2万1000人と減り、1グループ平均も16人強と減りました。セスナ機1機で2002年当時の暴走族1グループ並の排気ガスを排出していることになります。
セスナSkyhawk(172)(予備燃料等考慮せず)は6時間程で201Lの燃料を使い切ってしまいます。
CBX400Fは蛇行運転と常に高回転のエンジン出力により、航続距離が250キロ前後、燃料はセスナと同じ5〜6時間だったのではないかと予想されます。(CBX400F乗りの方教えてください。)
環境に優しいEnvironmentの”E”という点では、近年暴走族の方が一歩先を歩み始めており、人気のバイクが高額になっているということもあってか、スクーターが多くみられるようになっています。スクーターは排気量も50cc以下であり、環境に優しくスタイリッシュです。自動車エンジンもダウンサイジング+ターボとエコに向かっている中、暴走族も確実にダウンサイジングを進めています。
私は昨年夏に、スクーターに4人若者が乗っているのを見ました。前のカゴの部分に1人、操縦士とその後ろにピッタリと身体をつけた3人目、後部の荷台部分に4人目という座席配置でした。
速度も制限速度50キロを十分にオーバーした速度が出ていました。
小型飛行機にもまだまだ環境に優しいEnvironmentの”E”で可能性があると感じています。
参照リンク:
https://cessna.txtav.com/en/piston/cessna-skyhawk
https://jafmate.jp/blog/kurunandesu/180328-2_4.html