米空軍によると導入を進めているボーイング社KC-46Aペガサス空中給油・輸送機に関して、2019年7月に燃料漏れが見つかっていましたが、この問題は安全性に重大な危険を及ぼすことから「カテゴリー1」の欠陥となっています。
現在、空軍による受入検査を出荷前に機体に対して行い、問題の早期発見が可能かを検討しているとのことです。
二重系統になっている燃料システムにおいて、プライマリとセカンダリの燃料保護バリアの間で燃料が見つかったようです。空軍がボーイング社に送付した書類では16機の機体で燃料漏れが発見され、修理を必要としています。そのうち7機が書類作成時点で修理済みとなっています。
これから出荷する機体に関してはボーイングの工場で対応するようですが、COVID-19の影響で4月8日迄は工場の操業を停止しています。
「カテゴリー1」の欠陥は、機体やクルーを危険な状況に至らせる可能性のある、安全情の重大な欠陥を示すランクで:
[Category one deficiency – a problem “which may cause death or severe injury; may cause loss or major damage to a weapon system; critically restricts the combat readiness capabilities of the using organisation; or results in a production line stoppage,” ]
となっています。
KC-46Aはこれでカテゴリー1の欠陥5個目となり、ペンディングしている2件と本件の計3件が課題として残っています。
ペンディングの2件は:(昨年書いた記事の流用ですが)
● ブームオペレータが給油ブームを操作する際に必要とする遠隔画像システム(Remote Vision System)に関して、(1)一定の角度において太陽光などにより画像がブラックアウト等の不具合を起こすこと、(2)画像取得する3つのカメラの内、外側についているカメラ2台と中央のカメラとの取り付け角度の違いから、3つの合成パノラマ映像に歪みが発生するという欠陥に関しての2つがあります。
(1)に関しては、外部の光量に合わせて、コントラストと解像度を自動調整する機能向上を計画している。(2)に関しては、カメラレンズの改良、コンピューターに新たなアルゴリズムを組み画像処理能力の向上を計画しているようです。
● もう1つは、給油ブームの力が強すぎる為、比較的軽い機体が受油することが困難な場合があるという問題ですが、これは設計変更が開始されたという内容でした。この記事ではA-10攻撃機はエンジン出力が弱く、給油ブームへ自機を押し付ける力が弱い為、アクチュエーターを作動させることが困難のようです。
この(2)に関して、ブームオペレーターがブームと受油機との実際の距離の感覚がつかみにくいことから、ボーイングは解決策の1つとしてレーザー測距計を取り付けることを検討しているようです。これが上手くいけば、オペレーターにブームの先端の情報を更に与えることができるからです。
カーゴフックの欠陥については、昨年12月に問題解決し、ロック機構に関する「カテゴリー1」は無くなり、人員と貨物の輸送を再開可能となっています。
このカーゴロックの改修には、メインのカーゴロック機構を、さらにロックさせるセカンダリー・ロックが取り付けられました。
これらの問題による空中給油・輸送機の納入遅れは大きな問題となっており、米空軍は民間企業から給油機をレンタルする計画が出ており、年間5,000飛行時間、1,100ソーティ程の給油活動を念頭に2022年から開始する方向で動き出しています。候補会社としては、ロッキード・マーティン社とエアバス社がA330ベースのMRTT(Multi Role Tanker Transport)やOmega Air社のKDC-10などが挙げられます。決定するのは2020年6月頃となっています。
米空軍はこれらの機体を使用した場合、80%が訓練での運用、8%が試験・評価試験での運用、8%がFMS用機体の米国内での移動、3%が機体の大西洋と太平洋横断飛行時の運用が検討されています。
参照リンク:
https://www.flightglobal.com