2020年 航空機主要メーカーOutlook – ボーイング

 2019年はボーイング が全てのヘッドラインを奪い、その裏でエアバスは比較的好調な年を過ごしました。2020年はどのような年となるのでしょうか?各社のOutlookを簡単にまとめてみます。

  • Boeing
  • Airbus
  • その他

Boeing

  • 737MAX
    これを書いている時点で、ラインに残っていた機体の完成をもって正式な生産中止となります(1月中旬予定)。昨年3月13日から10ヶ月近く飛行停止になった状態で、生産を昨年末まで続け400機近くの機体が完成した状態で保管されていることになります。
    1月5日付のWSJ誌では、737MAXパイロットへのシミュレータートレーニングが必要となる可能性が高まっています。こうなるとエアラインの737MAX再投入はさらに時間を要することになると考えられます。
    多くのエアラインが毎月737MAXの商業飛行再開時期を延期し続けています。今後必要となるのは、先ず737MAX「-8」と「-9」の航空当局による再認定、その後飛行停止開始時期にちょうど認定途中であった「-7」と2019年11月に機体のロールアウトが行われた「-10」の認定と続きます。当初「-7」のEISは2019年で「-10」は2020年を予定していました。「-7」に関しては今年中に認定完了したとして、「-10」に関しては2021年までかかると予想されます。
  • 747
    昨年11月末で17機の引渡し予定機数がある747ですが、今後の動きは新たな注文の動きがないかな将来は不透明です。胴体を製造していたTriumph社が同社ロングビーチ工場にある747製造用設備の一部をオークションに出しています。クロージング・タイムも近づいています。
  • 767-300ERF/KC-46A
    767プログラムに関しては、昨年末当ブログで取り上げた通り、40歳にして脂が乗った良い時期に突入しており、中年の希望の星となっています。
  • 777X
    ボーイングが抱える悩みで737MAXの次にくるのが777Xプログラムでしょう。(少なくもニュースを見る限り。)昨年は初飛行を前に、エンジンに不具合が見つかり、改修でプログラムに大きな遅れが発生しました。エンジン以外の部分で認定作業で進めることができる部分は進められたとは思いますが、737MAXの認定問題により、当初よりも時間はかかると思います。
    主要顧客の1つであるEmirates Airline(エミレーツ航空)は、機体受入に関して16カ月間の飛行テストをボーイング社で行うことを望んでいます。初飛行が今月行われたとしても、引渡しは2021年4月〜5月ぐらいになるかと。
    欧州航空当局であるEASAも、独自の認定を行うと思われますので、これも引渡し時期予測を難しくさせるではないでしょうか。
    777X-8と同機派生型の貨物機タイプで777X-Fに関しては、開発が延期となっています。(詳しくは過去の記事をご覧ください。)
    受注機数に関してもキャンセル等があり、300機ほどとなっており、初飛行も迎えていない中、大型機の将来が危ぶまれるA380や747-8のような存在となる可能性があります。燃費の分野で大型機は、給料が高く年をとった早期退職者リスト入りとなっているようです。
  • 787
    売上4割の稼ぎ頭であった737MAXの現状から、この機体がボーイングの稼ぎ頭となっています。数年前まで、利益の出ない問題児であった同機が、現在ボーイングの希望です。しかし、同プログラムも今年月産レートを14から12機へと減産します。
    737MAXが止まっている中、売り上げをブーストしたいところです。しかし、大型の機体注文がほぼ無く、あったとしてもAirbus A330neoを前にかなり値引きを強いられ、エアラインには737MAXの求償対策としてさらに値引した形で営業する必要があれば、、、大変な状況に変わりは無いでしょう。受注機数と生産レートから2022年以上がさらに大きな値引きを行い、受注を伸ばす必要があり試練の時は続きそうです。
  • NMA? FSA?
    昨年、ブログを書き位始めた頃の最初のボーイングニュースが、NMAの発表延期のニュースでした。当時、一年後に発表を延期するとしていましたので、その通りであれば今月末〜来月頭に何らかの発表があると思いますが、ボーイングの経営陣も昨年10月以降退陣とシャッフルがあり、スケジュールと通りに行くかは疑わしいでしょう。これまで何年も検討してきたNMAですが、昨年延期を発表した後に737MAXの飛行停止〜製造停止へと大きなイベントが続き、雲行きは怪しいですね。恐らく、737MAX飛行再開をまってとなると思いますから、決定は更に先となるでしょう。
    明らかなのは、NMAサイズの機体をボーイングは新規で欲しいと思っていると思います。787-8は作っても利益が出ない機体ですし、それ以外でカタログにMAXを大型化させた737MAX-10や767しか無い状態ですから。必要なのはプログラムをスタートさせる起爆剤なのですが、737MAXがこの状況で、起爆剤も湿気ってしまった感じでしょうか。。。
  • 貿易戦争
    米欧は2004年からWTOを舞台に航空機補助金をめぐり争い、WTOはEUのエアバスへの補助金、米国の米ボーイングへの補助金をそれぞれ不当と認定しました。米国の報復関税の規模はWTOの裁定額として過去最高となります。エアバスの製造を支援するフランス、ドイツ、英国、スペインから輸入する大型民間航空機に10%を課すものです。EUもWTOの承認を待って2020年前半にも対米報復関税を発動する見通しです。
    EUを相手に繰り広げられてきた終わり無き戦争も、トランプ大統領が再選を狙う大統領選挙の今年に良い方向に向かう兆候は見られません。これは中国戦線も同じで、中国からの大型機受注は期待できないでしょう。(米通商代表部(USTR)によると、EUからの年間輸入総額に占める報復対象(約75億ドル分)の割合は2%弱にとどまり、中国に対する制裁対象(約3600億ドル分)よりも小さい。)
     

他メーカーOutlookへ続く