ボーイング 737MAXパイロットへのシミュレーター教育求める

 ボーイングは7日、2度の墜落事故を起こした新型機「737MAX」について「パイロットにフライトシミュレーターでの訓練を推奨する」との声明を出しました。ボーイングはこれまで旧モデル「737NG」の飛行経験があればシミュレーターによる訓練は不要としていて、コンピューターを使用したトレーニングのみを必要としていました。

米連邦航空局(FAA)はボーイングの提案に関して検討していますが、MAXの飛行再開にあたって具体的なトレーニング内容に関しては明らかにしていません。

しかし、FAAがシミュレーターフライト時間を要求事項に加えた場合、エアラインは数千人のパイロットを世界中で数十台しか無いMAXシミュレーターを使用しトレーニングする必要があります。これを完了するには数ヶ月間かかると予想される為、機体の商業飛行再開へのさらなるハードルとなります。
現在、世界中でMAXのシミュレーターは34基程しか無く、ボーイングが8基保有しており、各国のエアラインで残り26基を保有しています。(サウスウエスト航空は現在3基あり、改修されたソフトウェアのアップデート、それに伴うFAAからの認定を受けています。2020年末に向けて更に3基が導入予定です。)

12月上旬から737Maxの飛行再開に向けて、14のエアラインから派遣されたパイロットが改定されたトレーニングマニュアルとチェックリストの確認作業「セッション1302」を行っています。このテストは737Maxの6つあるチェックリストの変更点と非常時の対処(操縦)方法、MCAS(Maneuvering Characteristic Augmentation System)ソフトウェアが作動した場合の通常ではない事態での対処方法などを、ボーイングのシミュレーターを使用し確認作業を行うものです。

これが終了するとJOEB – Joint Operation Evaluation Boardによる作業が始まります。JOEBとはFAAと各国の航空局から派遣された航空機認証に向けたグループの事で、改定されたトレーニング内容と機体の操縦チェクリストの認定作業を行います。
JOEBはこの作業から得られたデータと情報をFAAのFSBに提出し、それに基づいてFAAが最終的なトレーニング内容に関して提案を行います。

2018年と2019年に2度起きた墜落事故は「MCAS」と呼ぶ機体の姿勢を自動制御するシステムの不具合が主な原因でした。このシステムは737MAXに初搭載したが、ボーイングやサウスウエスト航空などは旧モデルに慣れたパイロットはシミュレーター訓練を不要とし、FAAもこれを認めていました。これは航空会社にとっては訓練の費用と時間を抑えることができ、737MAXを調達する上でコストがかからないメリットになっていました。しかし、事故後の調査では制御システムへのパイロットの習熟不足も原因の一つとされおり、当初からシミュレータートレーニングを必要とするというパイロットの意見もありました。
航空会社のパイロットが訓練を受け直すことになれば、追加の費用や時間がかかるため、安全が保証されるのであれば避けたいことです。

しかし、12月から始まった「1302」の確認作業を行う中で、シミュレータートレーニングの必要性が出てきました。この確認作業ではシミュレーターをフライトしたパイロットの半数近くが機体に異常が起きた際、正しく対応することができなかったといわれています。

これまで安全の為に必要だという多くの声がある中、ボーイングも漸く認めたわけですが、ここまで時間がかかったのは、それだけ機体販売においてパイロットトレーニングを行うことがボーイングの営業にマイナスになることだったからだと思われます。安全性は二の次であったようですが、漸くそれが間違いだと…。3機目の事故が起きる前に気付いたのですね。