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カシミール紛争 ー インド・パキスタン空軍機撃墜(2月2019年)(2)

今回撃墜されたMIG-21 Bisonのパイロットは、撃墜される前にF-16を撃墜しており、この時、MIG-21は1機で3機のF-16と空中戦を一時的に行ったとの情報もあります。MIG-21が使用したミサイルはロシア製のVympel R-73短距離空対空ミサイル(NATOコードネーム: AA-11 Archer(アーチャー))のようです。

今回の撃墜ニュースが非常に興味深いと思ったのは、第三世代のMIG-21(正確には近代化改修されたMiG-21-93である為、第四世代(?))が第四世代のF-16を撃墜したという点で、これはMiG-21史上初の対F-16戦果となります。

インド空軍MiG-21 Bison (Image: Indian Air Force)

今回は、パキスタン側がカシミールのインド側支配地域に向けて対地爆撃を行う為に進出してし、インド側空域に入った為、インドがパキスタン軍機に対して、先手を打ったようです。

推測ですが、MIG-21が最初に撃墜することができたというのは、いくつかの要素が関係していると思います。先ず、ROEです。これは最初に挙げられる重要な点だと思います。(ROE=Rules of Engagement=交戦規定=簡単に言えば、相手に手を出すタイミングのルール、相手が撃つまで撃たないか、若しくは、先に撃つのかのルール。)

相手を攻撃する際は、確実に攻撃しようとしている対象が「敵」であることを確証する必要があります。その為、識別する為に双方がかなりの距離を詰めている状態になったのかもしれません。

ある程度の距離があれば、レーダー能力と遠距離の攻撃に有利な、パキスタン空軍のF-16D Block52に部があったと思います。しかし、それを活かすことができない状態が発生したのかもしれません。その要素として挙げられる幾つかの点:

● MiG-21の低レーダー反射面積、MiG-21は実はレーダーに比較的反射しにくい機体で、今回編隊を組んでいたSu-30と比べると1/5程のRCS(レーダー反射断面積)であること。

● AEW、地上レーダー等の戦闘機以外からの情報能力の点で、インド側の情報収集能力が優れていた。

● パイロットのスキル、インドはMiG-21を昔から飛ばしており、この機体の操縦に関して知り尽くしている。インド空軍のパイロットスキルは非常に高い。

● パイロットスキルに加え、この能力向上型のMiG-21 Bisonは、HOTAS、HMSも装備されているとの情報もあり、WVR(Within Visual Range)といわれる接近戦闘になれば、F-16の優位性はミニマイズされると思われます。

HOTASとは操縦桿とスロットルに機体と武器をコントロールするのに十分なスイッチがついており、パイロットが操縦桿とスロットルから手を離すことせずに、機体操作+武器操作ができるシステムです。昔のMiG-21には付いていませんでした。現代では常識の装備です。

HMSとはヘルメット・マウンテッド・サイトのことで、機体が敵の機体の方向に向いていなくても、パイロットのヘルメットの向きが相手を追いかけていれば、R-73のような高い機動性のミサイルを発射することができます。

● MiG-21は旋回率の性能も非常に良く、機体重量も非常に軽い為、加速性能が非常に良い機体といわれています。これらの要素も加わると、WVRの戦闘で非常に手強い機体であると言えます。(最大耐G性能は、F-16は9G、MiG-21は8.5Gとなっています。)

以上、1955年に初飛行し、1990年代に近代化改修されたMiG-21 Bisonと、その20年後の1974年に初飛行し、1990年代のアップグレードを適用したF-16D Block52の二つのジェネレーションの航空機の間で起きた今回の撃墜事件、双方が機体を失う結果となりましたが、第三世代の機体が場合によっては、第四世代の戦闘機と互角(?)に戦うことができた、そして、MiG-21によるF-16撃墜という史上初のニュースに付いて書いてみました。

ちなみに、1965年の印パ戦争で、インド空軍のミステール戦闘機と、パキスタン空軍のF-104戦闘機が交戦した際に、パキスタン空軍のF-104がミステールを撃墜したことでF-104史上初の撃墜戦果を挙げました。逆に、ミステールもF-104を撃墜しています。

おわり