SUBARU BELL 412EPX/UH-2

SUBARU BELL UH-2 Image:防衛省

 陸上自衛隊が導入する新多用途ヘリコプターUH-2はUH-1Jの後継機となる機体です。SUBARUが2015年9月に防衛省と締結した試作契約を受け、米国BELL Textron社と共同開発した民間向けSUBARU BELL 412EPXを共通プラットフォームとした双発ヘリコプターです。

 試作機のXUH-2は2018年12月に社内初飛行を行い、2019年2月28日に防衛省に納入されました。現在は、明野駐屯地を拠点に国内の試験場で性能確認試験を行っています。この機体はBELL社で製造された機体を輸入した機体です。今後はSUBARU社宇都宮工場に立ち上げられている生産ラインで製造される予定です。デジタルが主流の現代の航空機開発において、本機体は古い為、紙図面をBELL社から入手し、古い資料ベースで製造しているとしたら、非常に苦労しているのではないでしょうか。

412は市場ではミディアム(中型)サイズの機体で、このサイズではBELL社は以前にパートナー関係(2005年まで)にあったイタリアのAGUSTA(アグスタ)社のAW139の一人勝ちを許しています。

AW139は間違いなく過去10〜15年間で最も売れた中型商用ヘリコプターであり、昨年には1,000台目の納入を超えました。この機体は中型ヘリコプター市場を完全に変えました。これに対抗したければ、BELLは412に更なる投資を行いアップグレードするか、AW139に対抗できる新しい中型機体を設計・考案する必要があります。しかし、AW139の市場でのリードに追いつくのは困難なミッションです。

BELL社はこれ以上412に投資することはないと思われ、この機体はSUBARUで無事に製造されるとなれば、それが412プログラムの最後となると思われます。本国のBELL社生産ラインから412の製造ラインを取り除くことで、新型の軽ヘリコプターや軍用向けの特殊な開発等を行うスペースを設ける事ができます。

陸上自衛隊向けUH-2のベースとなるBell 412EPXは「EPX」とカッコいいアルファベットで「X」と次世代を感じさせるネーミングですが、基本的にはBell 412ファミリーのスピンオフです。シリーズでは412EPとEPIの後継機という位置付けです。
この412のプロトタイプは1979年8月に初飛行を行なっており、1981年1月から引渡し&運用開始されています。412-412SP-412HP-412EP/EPI-412EPX/UH-2となります。
412自体はBELL205(1961年8月16日初飛行)を双発化したBELL212の4枚羽根版で、BELL212は412よりもさらに10年前の1968年に初飛行しています。
因みにBELL205はBELL 204の胴体を延長するなど改良を加えた機体ですが、BELL 204は1956年10月20日に初飛行しています。
BELL 204から数えると64年、胴体ベースで言うと205の59年経っています。古いとは禁句。熟成されておるのです。

3月19日に防衛装備庁がSUBARUと量産第1次契約を締結しましたが、今後15年〜20年作り続けていく事となります。最終号機が引き渡される頃には原型機初飛行から80年経つ機体で、退役する頃は100年と考えると凄いですね。。。製造する側はどんなに複合材研究を行なっていたとしても、412製造で採用されている複合材技術は1970年代末の技術のままです。今後製造を続けていく中で、新たな技術の採用等があるのかもしれません。

1959年といえば頭に浮かぶのはCadillac Eldorado 1959なのですが、皆さんは?

Cadillac Eldorado 1959