今回の2019年パリエアショー にボーイングがPAV – Passenger Air Vehicleを展示しました。将来のオンデマンドの航空タクシーの可能性を探るコンセプト機体でした。製造を担当したのは、Aurora Flight Sciences社(2017年にボーインググループなっている)です。
少し前のニュースになりますが、このメーカーは2017年末にONR(アメリカ海軍研究局)のAutonomous Aerial Cargo Utility System (AACUS) というプログラムで、海兵隊のUH-1Hヘリコプターの自律飛行を成功させました。
これは既存のヘリコプターを自律飛行ドローンとして使用できるようにハードウェア・ソフトウェアがインテグレートされています。
AACUSを装備したヘリはLiDAR(レーザーによる測距システム)と光学カメラを組み合わせたセンサーで周囲の地形を読み取り、人間のアシストなしに建物や送電線などの障害物をさけつつ設定地点近くにランディングゾーンを探し、着陸できます。デモではパイロットが搭乗していたが、操縦桿には一切触れていません。
全て地上から兵士がタブレット端末で無人の自律飛行ヘリを呼び出し、補給を受けることができるシステムです。
タブレットの使用は15分もあれば扱えるようになるとのことで、複数の補給地点が同時に設定された場合、ヘリ側で自動的に最適なルートを算出するようになっています。
AACUSプログラムは米軍がアフガニスタンやイラクで、物資輸送の際に敵攻撃やIEDから被害を受けた経験を生かし、物資輸送のミッションのより安全に実施できるようにする為、既存のヘリコプターを無人運用、もしくはOPV(Optionally-Piloted Vehicle=ミッションによっては有人化)で運用できることを目指したものです。
このデモではUH-1ヘリが使用されましたが、AACUSはより大型のチヌークやブラックホークなど、他のヘリコプターでも使用できるとのことです。
この装置が実用化されれば、脅威度の高い地域へ、武器や飲料水、輸血用物資などをパイロットの身を危険にさらすことなく輸送することが可能になります。
有事の際のバックアップとしてこのような装備を選択できるといいですね。無人機の開発は日本でも行っていますが、このような既存の航空機を利用するシステム装備も平行して行えば、機体開発の手間は省けますし、パイロット不足となった場合にも選択肢の一つとできます。
常に戦っている国は、確実に殺すための開発と同時に、人命を如何に守るかの実際的で現実的な開発ができています。この準備がなければ、ミッションへの対応選択肢が少なく、危険度の高い選択リストからしか選べません。そして、命が失われた場合、そのパイロットを英雄視して終わりにする。そんな国にはしたくないですね。。。
ICYMI: "Autonomous helicopter could change warfare forever" – @CBSNews reports on Aurora's final AACUS demonstration for @USNavyResearch https://t.co/37UodUij6K pic.twitter.com/DI6nu2cDme
— AuroraFlightSciences (@AuroraFlightSci) December 18, 2017
参考記事:
ONR:https://www.onr.navy.mil/en/Media-Center/Press-Releases/2017/2017-AACUS
AURORA:https://www.aurora.aero/wp-content/uploads/2017/12/AACUS-Press-Release_FINAL-12.13.pdf