空自がF-35Aに導入希望している自動地面衝突回避システム Auto-GCASについて

JASDF F-35A 出典: 航空自衛隊HP

航空自衛隊三沢基地所属の最新鋭ステルス戦闘機「F-35A」の墜落事故で、空自は9日、調査結果を公表しました。6月に公表した中間報告と同様、機体に不具合は確認されず、操縦士が機体の姿勢を認識できなくなる「空間識失調(バーティゴ)」に陥ったことが原因としています。「Auto Recovery」スイッチに関しては搭載されていたものの、それを使用する必要があることに気付く時間も無かったのではないかと思われます。
この事故を機に空自は、墜落しそうになった機体が自動的に回復動作を行う「自動地面衝突回避システム」(英語:Automatic Ground Collision Avoidance System (Auto-GCAS))の早期導入を目指すと明らかにしました。現在、空自機には搭載されていません。

Automatic Ground Collision Avoidance System (Auto-GCAS)
Auto-GCASはNASAと米空軍研究所がF-16戦闘機の為に開発したシステムです。
Auto GCASは地上衝突の可能性を判断するため、機体や地形データ、その他のさまざまなモニタに表示する各種センサーを使用します。パイロットが操縦中に様々なシナリオで強いGを原因とする空間識失調となり地上衝突の可能性がある場合、またパイロットの操作や入力がない場合などにAuto GCASが作動して安全な飛行状態に回復するための最良の方法を計算し、自動で機体を安全な高度と姿勢に戻します。

同様のコンセプトの装置は既に米空軍のF-16やF-22戦闘機に搭載されており、これまで5年間で8名の空軍パイロットの命を救っています。F-35用Auto-GCASソフトウェアもF-16用ソフトウェアをベースに開発されています。

米空軍はF-35Aに当初2026年からAuto-GCASを導入する予定でしたが、7年早め導入開始した事を、7月に明らかにしていました。
F-35Aに導入されたのち、海軍や海兵隊で使用されているF-35BやF-35Cモデルにも順次導入されていく予定です。

Auto GCASが実際に作動し、パイロットの命を救った米空軍の映像が公開されています。この映像は2016年5月に機密解除されたもので、機体のヘッドアップディスプレイに投影される映像を収めたものです。インシデントが発生したのは2014年後半で、訓練中だった新人パイロットがアフターバーナーを作動させたまま急旋回を行ったところ、強いGに耐えきれずに意識を失ってしまいました。その後、異変を察知したAuto-GCASが機体の制御を乗っ取って機体を水平飛行に戻す様子が以下の動画に収められています。

 
航空自衛隊報道発表リンク:
https://www.mod.go.jp/asdf/news/houdou/H31/20190809.pdf
参考リンク:
https://www.edwards.af.mil/News/Article/1692048/f-35s-begin-auto-gcas-test-flights/
https://sldinfo.com/2019/07/f-35-enterprise-fields-auto-gcas/
https://gigazine.net/news/20160925-f-16-automatic-gcas-saved-life/#group=nogroup&photo=0