米空軍の次期レット練習機(T-X)は、空軍のノースロップT-38Cタロン練習機を更新するもので、2018年9月にボーイング 社案が351機の機体を供給する契約を獲得しています。初号機はテキサス州サンアントニオ基地に2023年に引き渡される予定です。
T-X選定は終了していますが、この選定で敗れた残りの2社に新たな機会が与えられる予定です。敗れた2社の機体はKAI(Korea Aerospace Industries)/Lockheed Martin社のT-50とLeonardo社のM-346です。この契約に2社が提案をしておりHillwood Aviation(Perot company)社がT-50、Mission System Solutions社(MSS)がM-346を提案しています。どちらかの機体が、米空軍のRFX契約を獲得した場合に米空軍で練習機として少数の機体が期間限定で採用されることになります。といっても機体はT-50Aとなりそうです。↓
(一言で)これはボーイング社のT-7Aがまだ開発途中であることから、実際の引渡しの2023年までに空軍が、次世代の訓練環境の基礎作りをする上で、すぐに飛べる機体を必要としている為です。
米空軍ACC(Air Combat Command)のRFXと検索するとPDFの書類を見ることができ、機体の要求仕様に関して幾つか記載されていますが、あまり深い情報はありません。ジェームズ・マイケル・ホームズ将軍はこのRFXの要求に関して、4〜8機のジェット練習機で、年間4,500飛行時間を5年間としています。また、この中で超音速飛行できることが望ましいとあることから、T-50が優位となります。↑
また、レーダー搭載に関してもT-50はIsrael Aerospace Industries EL/M-2022を既に搭載していますが、M-346はGrifoレーダーの搭載に関して認定途中であり、米国で選定試験に使用された機体等への搭載は難しい事から、この点でもT-50が有利となっています。(後からデビューしたM-346FA軽戦闘機はレーダーを搭載していますが、その技術をそのままM-346には使用できないようです。)
米空軍が進める「Project Reforge」のもと、このRFXの主な目的は、これまで使用されてきた訓練機体がT-7Aに変わることで大きな訓練システムの更新が行われる中、米空軍のパイロットを訓練するシステムがこれまで何十年も変わっていないことからこれを機に一気に新しい訓練システムを構築したいというものです。その為に飛べる機体を貸してくださいということですね。
実際、現在の訓練システムは第二次大戦のものから大きくは変わっておらず、1930年代12カ月間の訓練を行っていましたが、GPSやグラスコックピット化、オートパイロット装置、デジタル機器が装備された現在の訓練も12カ月間の中で行われています。
パイロットトレーニングはUFT(Undergraduate Flying Training)プロセスで座学を中心とした第一段階、第二段階でターボプロップのT-6A Texan IIを使用した飛行訓練が行われ、第三段階のLIFT(Lead-In Flight Training)でそれぞれの配属に合わせた飛行訓練へと進みます。戦闘機操縦者はT-38 Talonジェット練習機に乗るのですが、その前にT-6Aでより多くの訓練を行います。戦闘機操縦者はその後IFF(Introduction to Fighter Fundamentals)へと進み、その後、実際に空軍で使用しているF-15やF-16など特定の機体での訓練を行うFTU(Formal Training Unit)へと進みます。
この訓練ですが、段階を進むごとに訓練生は、家族がいる場合は多くの場合家族も共に訓練基地がある場所へ引っ越しを行う必要があり、2年弱の間に3回の移動を強いられています。これは空軍が現在パイロット不足に悩んでいる一因とされ、新たなプランでは、将来のパイロット候補生が引っ越し回数を一回のみで済むように計画しています。ですから、最初のUFTの2段階を終了後、将来の配属先となる飛行隊がある基地にてT-7Aジェット練習機での訓練を行い、引き続き最終的に操縦することとなる戦闘機等の機体訓練を同じ場所で行うということです。(これによりIFF段階で別の基地、FTUで更に別の基地という移動を行わなくて済む。)
この新しい訓練プロセスにより、訓練プロセスをシンプル、スピードアップすることができるとみており、また、実際に配属される基地での訓練を行うことにより、隊員の絆強化という点でも期待されています。
また、この新しいプランで基地にT-7Aが配備されるようになれば、訓練だけでなく、アグレッサー機体として使用することもできるかもしれません。そうすれば飛行単価の高い戦闘機をアグレッサー役に使用しないことで、戦闘機の期待寿命のセーブとコストダウンを狙うこともできます。懸念される点は、これまで集中して置かれていた訓練機体が、各基地に展開されることになる為、機体整備やロジスティックの点で新たな問題が発生し、メリットとして打ち出したアイテムをオーバーライトする可能性はあります。
計画通りに進むかは分かりませんが、これまで何十年も続いてきた訓練システムを変えていくということは重要であり、新しい装備やシステムの導入に合わせて質の良いパイロットを効率的に訓練していくプロセスは非常に重要なことです。
ジェット練習機の選定ネタで書き始めましたが、パイロット不足と訓練環境に関してもメモになりました。
参照リンク:
https://www.acc.af.mil/
https://govtribe.com/opportunity/federal-contract-opportunity
https://aviationweek.com