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ボーイング737 MCASシステムのソフトウェアアップデートについて

昨年から今年にかけて起きた、2件の737MAX墜落事故に関してボーイングがMCASシステムのソフトウェアのアップデートを行うとニュースがありました。

これはライオンエアの事故の後、ボーイングは対策を開始していたようです。(一部では米国トランプ大統領の政府機関の一部停止(ガバメントシャットダウン)の影響も指摘する人がいますが。)

このアップデートされるMCASについて少し書いてみます。

● 737のシリーズについて。

● MCASとは何?<情報更新しました>

● MCASのアップデート内容は?

● 今回の事故責任はボーイングにあるの?

737のシリーズについて。

737は1968年から運用されていますが、シリーズで第一世代と第二世代に当たる型番で737-100/-200/-300/-400/-500までを「クラシックシリーズ」と呼びます。

第三世代に当たる型番が、737-600/-700/-800/-900とあって、これらを「NG」シリーズと呼びます。

今回事故にあった737は第四世代にあたり、-7/-8/-9/-10という型番で「MAX」シリーズと呼んでいます。

MCASとは何?

前の記事でも触れましたが、ライオンエアの墜落事故とエチオピア航空の事故に類似性があると言われています。その中心にあるのが、どちらもパイロットがMCASのシステムによる「機首下げ」動作に対して、対応できなかったと思われる部分です。

MCASとは、Manoeuvring Characteristics Augmentation System(飛行特性向上システム、失速防止システム等の訳がある。)の略です。

このシステムは、737型機のNGとMAXシリーズの機体のスピードトリムシステムの中に組み込まれているものです。

このスピードトリムはパイロットが操縦桿を引き戻すときにスタビライザー(水平尾翼)を調整して、(パイロットの入力とは逆の力を)じわりじわりと力をかけていくシステムです。

MCASシステムがMaxの機体にも採用されている理由の一つは、機体に搭載されている新型のエンジンです。MAXのエンジンは、以前の機体よりも重く、直径も大きく、「NG」シリーズの機体と比べて、機体の前の方にシフトしています。

<情報更新しました> MAXシリーズのエンジンはCFM Leap 1エンジンという最新型のエンジンが採用されています。NGシリーズの機体にはCFM56-7エンジンが採用されていました。このMAXのCFM Leap 1エンジンはその大きさから、機体のAOA(迎え角)が大きくなればなるほど、その揚力も比例して増えていく傾向にあります。その為、NGに比べてより大きなピッチアップモーメントを生み出します。この対策としてMCASはMAXとNGの操縦性の違いを最小限にする為、認証に必要な項目として加えられたシステムです。

このシステムは、いつ作動するかというと、自動操縦装置(Auto-pilot)が切/オフで、フラップが上がった状態です。そして、システムの情報は元々機体に二つ付いているAOAセンサー(Angle of Attack sensor)の片方一つからのデータに基づき作動します。

左右に一つ付いているAOAセンサーの位置(上二つはピトー管)

MCASが作動すると、AOAの角度が増えるに従ってパイロットの持つ操縦桿に徐々に力を加えていく仕組みです。

このシステムは「NG」シリーズと「MAX」シリーズに共通の操縦性を与えるため、パイロットによってはiPadベースのトレーニングを1時間弱受けるだけで、「Max」シリーズへ機種変更しています。

<情報更新しました> このMCASに関しては、二つの方法でパイロットが介入できるようになっています。一つが操縦桿のそれぞれ窓側に付いている電気トリムスイッチ、もう一つは操縦席の真ん中のコンソールにあるSTUB TRIM CUTOUTスイッチです。電気トリムスイッチはMCASを5秒間中断させ、新しいスタビライザートリムの基準点を立ち上げてくれます。この二つのスイッチをどちらもOFFにすればMCASの動作とスピードトリムシステムを切ることができます。

MCASのアップデート内容は?

今回のアップデート内容は、システムが機体についているAOAセンサーの二つ両方からデータを取得する。そして、コンピューターが二つのセンサーの誤差の範囲をチェックし、5.5度以上の誤差がある場合はMCASを解除するというものです。

この変更により、MCASが何度も起動介入することを防ぎ、パイロットがいつでも操縦桿を引くことで、手動介入してMCASシステムをオーバーライドし、スタビライザーの動きをコントロールできるようにするものです。

また、ボーイングはMCASの理解を深める為の短い30分ほどでMAXへのコンバートを助けるトレーニングも作っているようです。

今回の事故責任はボーイングにあるの?

今回のソフトウェアのアップデートで、現在飛行停止中の737MAXの制限は徐々に解かれていくと思われます。これは、それぞれの国の基準によって変わってくると思いますし、エアバスとボーイングの競争や、米中の貿易戦争の影響もあると思います。

今回の事故に関しては、現在、事故調査の段階ですし、ボーイングはあくまでこの機体は安全であり、今回のソフトウェアのアップデートでさらに安全になるものだという考えは、自分たちを守るために最後まで変えないものだと思います。

<情報更新します。ー2019年4月4日>

米ボーイング、自動制御システムの問題認め謝罪 ボーイングCEODennis Muilenburg氏の動画が公開されています。

What's New
Learn what Boeing and the FAA have done to complete the 737 MAX Return to Service. What steps have been taken to get the Max back in the air safely?

<情報更新終わり>

また、今回のMCASに関しても、元々パイロットの操縦桿に付いている、それも親指の直ぐ下にあるスイッチと、マニュアルトリムを使ってMCASのスタビライザー動作をオーバーライドできる方法はすでに備わっていたと、ライオンエアの事故直後から何度も強調しています。

このMCASが何故二系統あるAOAセンサーの片方一つからのデータのみで作動し、二系統を使用しなかったのかという点については、機体の安全性に関わる部分でリスクが高いシステムについては複数の系統からとるが、危険でないカテゴリーの装置に関しては、一系統から取る場合もあるようです。パイロットがオーバーライドできる部分で安全だと考えられているということでしょう。

以上、今回の737MAXの墜落事故で出てきたMCASというシステムについての説明と、現在の状況についてまとめてみました。

先程、ニュースでエチオピア航空が事故の調査結果を発表するというニュースをみました。どんな内容なのか、またアップデートしたいと思います。

自動化が進むと、便利な反面、パイロットの仕事が減り、自動化された部分が壊れた際に、本来の飛行機を「操縦する」という基本的な部分でパイロットがいきなり現実に立たされ、対応できないという可能性はあります。「思考停止」している部分にいきなり電気を流しても、久しぶりだと動かないわけです。

Idiot-proofの飛行機を作ることは不可能。だからパイロットにはエアラインもお金をかけてトレーニングさせ、我々も高いチケット払って少しでもレベルの高い航空会社の飛行機に乗ってリスク軽減しているのです。エアラインはそれで選べたとしても、大元の飛行機自体がどのようなトレーニングをすべきかについて正しくガイドできていなかったらどうなるのでしょう。エアラインがお金をかけないでもパイロットが機種変更できるように、都合のいい様にできていたらどうなるのでしょう。。。

終わり