SpaceJetの今後

 将来的な開発中止も視野に含めた大幅な見直しを進めているSpaceJet/MRJ。

一方で昨年発表されたカナダのBombardierからリージョナルジェット(RJ)機「CRJ」事業の買収は正式に行われ、三菱重工業(MHI)の完全子会社「MHI RJ アビエーショングループ(MHIRJ)」が現地時間6月1日発足しました。これによりCRJシリーズの保守やカスタマーサポートなどを行います。新造機に関しては現在バックログが約15機程残っています。

MHIはSpaceJetの開発費を前年度の半分に圧縮し、北米向けのM100は検討作業を凍結しました。M100に関しては市場の動向を見極めてとなっています。(M100は既に495機のMOUを結んでいたとみられる。)

 今回のニュースは、Boeing社との協業が決裂したEmbraer社にとっては良いニュースだったように見ますが、これはあくまでMHIがSpaceJetから手を引くとなった場合です。実際、MHI・MITAC・SpaceJetにどのような将来的オプションがあるのか勝手に予想してみたいと思います。

  • SpaceJetプログラム ー 再開
  • SpaceJetプログラム ー 終了
  • Boeing社がMRJプログラムをサポートする契約を復活させ、それをSpaceJetに更新 共同でSpaceJet開発とマーケティングを強化
  • 全く新しい契約で、737MAX後継機かNMA Liteの開発
  • Embraer社買収

SpaceJetプログラム ー 再開
 これは以前の記事で書いた通り、将来的にMHIが民間航空機事業で主役になる為の一生に一度のチャンスであり、カナダのBombardier CRJ事業を買収し、SpaceJet M100をサポートしていくというのが当初の計画ではなかったのでしょうか?M100とその後継機を開発することで、Embraer社とRJを独占できるチャンスです。また、CRJ事業を買収したことにより、既存のCRJユーザーの一部を将来のSpaceJetの顧客とすることも可能で、プログラムをさらに遅延させない限り今回の買収の相乗効果を調査しサービスとスペアパーツサポートの観点で最適化できる可能性を秘めています。

科学者たちの間では、長距離を飛行するよりも、小型のRJ機体で短い距離をホップしながら移動する方が感染等に有効だと考える人もおり、これから世の中がどう動いていくかですが、RJマーケットに根を張るチャンスをMHIは6月1日に手に入れました。

SpaceJetプログラム ー 終了
 M100の開発は行わないと決定すると、8年遅れのM90のみ受注分製造し、それ以上の受注は望めないでしょう。M90は900以上の修正を行いましたが、それでも認可が下りることが怪しまれている状態であり、Embraer E2との競争に勝てる機体では無いでしょう。

Boeing社がMRJプログラムをサポートする契約を復活させ、それをSpaceJetに更新 共同でSpaceJet開発とマーケティングを強化
 Boeing社とEmbraer社が合弁事業を提案する前に、Boeing社とMRJを開発している子会社である三菱航空機株式会社(MITAC)との間に協力協定がありました。 MITACの合意は、Boeing社とEmbraer社の間の合意ほど広範囲ではありませんでしたが、技術交流、マーケティング、サービスのサポートが含まれていました。

 Boeing社グローバルサービスの元CEOであるスタンディールは、エンブラエルとの契約が発表された後でも、Boeing社はこの合意を尊重すると語っていました。Boeing社とEmbraer社が決裂した今、MRJ協定の復活は1つの選択肢です。以前の合意は弱すぎたため、MITACにはあまり役立ちませんでしたので、内容を強化するというのも一つの方法かもしれません。

全く新しい契約で、737MAX後継機かNMA Liteの開発
 これまでのBoeing社との関係を活かし全く新しい契約を。。。というのもありでしょうか。
 Boeing社とEmbraer社の合意は、Embraer社は150席までのすべての飛行機の開発に責任を負うというものでした。これは737-8のサイズに相当する機体でした。Embraerは既に機体の開発と販売を行っているという点で、Boeing社にとってはMITACよりも安心な相手だったわけですが、MHIと同様のプロジェクトを組むとなれば、資金的には日本企業と組むメリットがあるでしょう。これが実現すれば、737MAXの後継位開発にBoeing社&MHIとなんてストーリーも。

 NMAは現時点ではお蔵入りですが、Boeing社もどこかのタイミングで220−250席クラスの機体を製造する必要があります。MHIと共同でNMA Liteの開発の可能性もあります。

Embraer社買収
 Embraer社はE2という素晴らしい製品を持っていますが、それ以降の機体で2025年以降を見据えた機体が今ありません。MHI/MITACはM90/M100というアイデアを持っており、Boeing社も次世代機の開発が必要です。MHIがEmbraer社を買収し、上記の通りBoeingと共同開発で、737MaxもしくはNMA Liteを作っていく。。。こうすれば日本のマーケットにBoeing社がさらに深く入り込むことが可能となるかもしれません。