Aviationweekの先月の記事に、Lockheed Martinが米空軍、海軍向けに新型空対空ミサイルを開発しているとありました。
米軍のAIM-120 AMRAAMミサイルよりも射程があり、中国が開発したPL-15ミサイルに対抗する目的のようで、2021年にテストを行い、2022年には運用開始を目指しているというものです。
正式には”AIM-260 Joint Advanced Tactical Missile” – (JATM)となっています。
念頭にある中国が開発した「PL-15」は、AIM-120 AMRAAMと比較しても遜色ない性能で、有視界外から発射が可能で、発射されるとマッハ4で高高度へ到達しその後マッハ2.5で巡航、200kmの距離の標的と交戦する能力を有しており、米軍は自軍へアウトレンジで攻めることができる相手へ対抗する必要があります。
このため、ロッキード・マーティンが極秘裏に開発しているのが、今回、その存在が初めて公に発表された「AIM-260」です。
サイズに関して、ステルス戦闘機のF-22やF-35は、ウェポンベイ内に空対空ミサイルを搭載するため、AIM-260はAIM-120とほぼ同サイズになるようです。(ラムジェット推進を採用していない。)
AIM-120とほぼ同サイズにも関わらず、射程が長いということは、新型のロケットモーター(Boost-Coast-Boost切替や、全く新たな方法?)や、制御アクチュエーター、航法の改善により延伸が図られているのでしょうか。射程距離はAMRAAMの倍とも言われています。(AMRAAMの射程については、以前の記事を参考ください。)
射程だけでなく、最近の新型ミサイルに多い、誘導装置の複合化が図られている可能性が高いでしょう。アクティブ・フェイズド・アレイ・レーダー探知と、赤外線イメージング機能による探知の「デュアルモードシーカー」を採用している可能性です。これにより、電子戦環境では赤外線により、逆にフレア等で撹乱された場合はレーダーを使用することで命中率を高めることができます。
データリンク機能に関しても、(既にAIM-120 AMRAAMにも一方向性データリンク機能(発射母機→ミサイル)はありますが、)さらに進んだ双方向データリンク機能が付与されます。これにより、新しい情報の送受信、正確なターゲット情報の取得、ミサイル発射後にターゲットの変更、ミサイル発射母機からの指令による指示などが可能になるでしょう。このような機能により、戦闘機のレーダー探知距離外からのミサイル発射、もしくは戦闘機のレーダーを使用しないでミサイルを発射することができ、戦闘機自身を敵のレーダーに発見されないようにすることも可能になるでしょう。
今後の製造数量は現時点で情報はありませんが、AMRAAMが1991年から運用されてきたことから、AIM-260 JATMも長期間製造されるでしょう。
参考記事:
https://aviationweek.com/defense/lockheed-quietly-developing-aim-260-counter-chinese-pl-15
https://www.thedrive.com/the-war-zone/28636/meet-the-aim-260-the-air-force-and-navys-future-long-range-air-to-air-missile