ボーイング737MAXの飛行停止が始まって来月13日(日本時間14日)で1年となります。飛行再開までのステップと、現在どの辺りにいるかに関してメモ。
私も737MAXの飛行再開ネタを幾つかメモしてきましたが、忘れてはならないのは、ライオン・エア610便とエチオピア航空302便の合計346名の犠牲者とそのご家族のお気持ちだと改めて思います。そして更に安全な航空機の運行がなされる為にどのように各機関が動いているのかをまとめてみました。
飛行再開時期に関してはボーイングが1月21日に同社のホームページでステートメントを公表し、同型機の飛行再開時期が2020年中旬と予想していることを公表しました。
しかし、FAAはこのような「圧力」は好ましく思っておらず、あくまでFAAペースでやるべきことを淡々とやっていくのだと思います。
今後、再認可に向けた飛行試験等が行われる予定ですが、それまでにボーイングには幾つかの課題が残されています。
それらには、通常飛行の際に、昇降舵トリム・インジケーター・スイッチのライトが点滅、機体後部の配線においてショートする可能性があることなどです。(以前の記事)
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これらの対策がされた後に、再認可に向けた飛行試験がFAAのパイロットによって実施され、最終的な改修済みソフトウェアを使用して、機体が旅客機としての問題なく作動するかが検査され、その後数日かけて飛行データの分析が行われます。
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FAAによる飛行が終わり分析が終了した後、最後のJOEB(Joint Operation Evaluation Board)による作業が行われ、パイロットが737MAXを飛行する為に最低限必要な要求するトレーニング項目を決定します。JOEBの作業には新たなトレーニング項目のヒューマン・ファクターの評価をシミュレーターを使用して確認するプロセスも含まれます。これらの作業には2週間ほど必要とするようです。JOEBとはFAAと各国の航空局から派遣された航空機認証に向けたグループの事です。
ここでの結果は、FSB(Flight Standardization Board – 飛行基準評価審査会)のクルーへのミニマム・トレーニング・要求項目を定める報告書に追加されます。ボーイング が737MAXパイロットへシミュレーター訓練を提案していますが、これらもここに含まれます。
このJOEBとFSBでの作業は合わせて1ヶ月程かかる見込みです。
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再認可の飛行試験終了後、ボーイングから最終設計書類等がFAAに対して提出されます。FSBからの報告書もそれをクロスチェックする形で提出されます。FAAは現在飛行停止中の737MAX 8と9に関してのMMEL(Master Minimum Equipment List)をアップデート版のドラフトを発表していましたが、それも締切最終版とする必要があります。年末にウェブサイト上に掲載され、30日間公開する事でコメント等を受け付けていました。(以前の記事)
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これら全てが提出され確認されたならば、FAAはContinued Airworthiness Notification to the International Community (CANIC) (他国航空局への耐空性通知)を発行し、その後AD(airworthiness directives – 耐空証明)が発行されます。この間は2-3日で行われるプロセスとなります。ADにはMAXへ適用されたすべての変更点、米国/FAAでのパイロットに要求される新たなトレーニング要求項目等が含まれます。
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飛行停止が無事に解除されると、FAAが737MAXの機体1機毎に耐空証明書(Certificate of Airworthiness)を発行していきます。
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(FAA/米国の場合)各航空会社はFSBからのトレーニング要綱に基づき、それぞれのトレーニングシラバスを作成し、FAAに社内でのトレーニング内容の説明を行う必要があります。
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エアラインによっては数千人いるパイロットにシミュレーター教育を実施して行きますので、これにも時間を必要とし、エアラインがこの機体を商業運行のスケジュールに復帰させるのは簡単なことでは無いことがわかります。現時点では6月頃としていますが、また延期される可能性もあります。(以前の記事)
上記が今後737MAXが実際に運行されるために必要なステップとなります。(順序や内容など間違っていたらごめんなさい。)
参照サイト:
https://www.faa.gov/news/updates/?newsId=93206
https://www.boeing.com/737-max-updates/