陸自次期戦闘ヘリコプターAH-X/NAHについて(5)

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無人機との関係
攻撃ヘリコプターのミッションが、対ゲリラ戦の様なレベルであれば比較的に有利に遂行できるが、それ以外のミッションには非常に危険が伴うということを書きました。また無人航空機の出現で、これまで攻撃ヘリコプターが得意としていた任務の多くを、無人機で十分にカバーできることも、AH-Xを選定する上で検討すべき分野となります。自衛隊には偵察用の無人機はある様ですが、攻撃ヘリの様な武装ができる無人機を整備していません。このことも、日本が大事なパイロットを守るという点で、他の国よりも遅れている分野に見えます。

無人機の運用に関しては、日本は理解ができないくらい出遅れています。電子部品をまとめ上げるのは日本のお得意分野と思っていたのですが、やはり航空法や電波法など空飛ぶものすべてに首輪がつけられている様な日本の空では、アメリカの様に自由な発想で無人機を開発していく環境にないのでしょうか。。自衛隊にFFOSというヘリコプター型の無人機が整備されたことがありましたが、福島原発の事故の際の様な、まさに無人が求められる状況で使用されることはありませんでした。迷子になるから、なんて噂を聞いたことがあります。

無人航空機に武装し、遠隔で地上の敵を攻撃することが、武士道に反するのか、倫理的に問題なのか、そんなところで躓いていたら、、、それは考えすぎですよね。。相手はゲリラでそんなこと御構い無しの脅威ですから、大事なパイロットを危険から守るという点でも、無人機は最適な自衛手段と思います。

武装した無人機を併用し、攻撃ヘリと共同でそれぞれの役割分担しながら、リスクの高いミッションを無人機に任せる様な、バランスのとれた装備を考えることもこれから大事な時代かと思います。既に実用化されている無人機が商品棚にあるのに買わないなんて選択肢はないと思います。”世界最強の…”みたいな高性能の装備を持っていても、それを補完し合うような装備に欠けていると、心配ですね。

次世代を視る
チルトローターというヘリコプターの特性と固定翼機の特性を併せ持つ航空機が既に実用化されている時代です。そこに従来のヘリコプターの攻撃ヘリを今後何十年も使用する考えで整備するというのも遅れた考え方かもしれません。世界、特に米軍の航空機の今後の動きに少しでも足並みを揃えることは必要で、次世代の航空機へのつなぎとなるような選定が必要な時期かもしれません。

米国では2008-2009年ぐらいに次世代の米軍のヘリコプター等垂直離着陸機を開発する為に、FVL/JMR(Future Vertical Lift/Joint Multi-Role)という計画をスタートさせました。この計画は米軍の使用しているヘリコプターを全て次世代型回転翼機に更新させることを目標としてた計画です。

The Sikorsky-Boeing SB>1 DEFIANT™ helicopter achieved first flight March 21, 2019. With its two coaxial main rotors and rear-mounted pusher propulsor, DEFIANT is unlike production rotorcraft available today. Photo courtesy Sikorsky and Boeing.

これは米軍が近年の中東での戦闘で経験したヘリコプターの多大な損害から、さらなるスピード、航続距離、飛行高度、自動化、(友軍間の)情報連結性、信頼性、メンテナンス性の全ての面で革新的な航空機の必要性を再認識した為です。

現在、複数のメーカーが実証機を試作し、飛行試験が始まっています。実用化が始まるのは2020年代半ばのような情報もあります。

1950年代、朝鮮戦争を機に、その後戦場の欠かせない戦力となったヘリコプター、ベトナム戦争で攻撃ヘリという新しい航空支援の形を担ってきたヘリコプター、これまでの80年近く続いてきた”従来の”ヘリコプターも、このFVL計画でこれまでと全く違う概念の航空機として生まれ変わります。

さあ、AH-X/NAHどうなるでしょうか?

Bell V-280 Valor : Bell