FARA デザインコンセプト 各社まとめ

 米陸軍の将来型攻撃偵察機(FARA:Future Attack Reconnaissance Aircraft)プログラム向けの機体コンセプトまとめメモ。公開日順です。

AVX Aircraft & L3 Technologies team
一番最初に公開したのはこのAVX/L3共同提案の機体で、メーカーホームページでは「AVX-L3Harris Compound Coaxial Helicopter (CCH) 」と紹介されています。
二重反転ローターと機体後部左右に取付けられた2基のダクテッドファンを組合わせたコンパウンドヘリコプターです。更に揚力を生む固定翼を備えており、高速飛行時は必要な揚力の半分を担います。
AVXは最高速度370km/h以上、航続距離は424km以上が見込まれています。その為、降着装置や武装は格納式です。

BELL
10月2日にBell 360 「Invictusを公開しました。
他の候補メーカーのコンセプトと比べるとコンベンショナルなメインローターとテールローターを備えた通常ヘリコプターデザインとなっています。このBell 360 Invictusは、現在開発中で2015年に初飛行し飛行試験を現在も行なっているBell 525 Relentlessのローターシステム技術を使用するようです。Bell 525 Relentlessは試験飛行で200kt(371km/h)を記録しており、Bell 360 Invictusは185kt以上が可能であるとしています。
機体には小さな翼がついており、これにより180kt巡航時の揚力の50%を生み出すことができるとのこと。
テールローターはBELLでは初採用のダクテッドファン(AIRBUSのFenestronスタイル)のデザインとなっています。
フライ・バイ・ワイヤー飛行制御システムにより、飛行中、水平安定板が最適な角度にコンスタントに調整され機体姿勢を制御することで機体の抗力を最小限にするシステムが搭載されるとのことです。

Sikorsky(LMT)
10月14日にSikorsky 「RAIDER X™」を公開しました。
今回発表されたRAIDER Xは、長年の開発、テスト、改良で培われた実証機X2のテクノロジーとS-97 Raider の技術を応用した機体で、「Advancing Blade Concept Rotor」を採用した二重反転式ローターと機体後部の推進用プッシャープロップを備えたコンパウンドヘリコプターです。機体デザインは低視認技術の点で力を入れていることがわかる機体となっており、「Budget-friendly RAH-66」とさせて頂きます。

Karem Aircraft
10月14日にKarem Aircraft「AR40」を公開しました。
”40-ft. Active rotor”を略した「AR40」という機体で、メインローターが3枚のアクティブローターで構成されており、胴体左右にFARAプログラムコンセプト機では最大と思われる翼、スイベル式のテールローターを採用したコンパウンドヘリコプターです。
 メインローターの直径は11mで、Karem社のOSR-Optimum Speed Rotorテクノロジーが採用されています。直訳で最適速度ローターですが、アクティブコントロールローターとも呼ばれており、垂直飛行と水平飛行時とでローターのスピードを減速機で調整することによりローターを推進に最適な状態にコントロールする技術が採用され、それぞれのブレードが独立して精密に動くことで、飛行状態に合わせた最適な角度にコントロールされ、効力を最低限にし、高速時の振動を抑えることが可能となっています。また、この電気アクチュエーターの動力は機体から供給するのではなく、ローターハブで発電されるということで、機体から回転するローターへ電気接続が不要とのこと。このような機構から、メインローターはリジッドタイプ、ヒンジレス・ハブとなっており、スワッシュプレートとピッチリンクが不要となる為、胴体とロータマスト付け根部分を非常にコンパクトにすることができ、機体の抗力低減に寄与しています。
「Most Inovative」メインローターシステムと思います。

Boeing
5社の中で一番最後の公開となりました。機体は通常のヘリコプターのお尻部分にプッシャープロップが取り付けられたコンパウンドヘリコプターです。中間ギアボックスの後ろにクラッチがありテールローターとプッシャープロップへの動力をコントロールします。
先日の記事でも書いた通り、メインローター6枚(ヒンジレス)、テールローター4枚、プッシャープロップ4枚というローターブレード構成です。エンジン吸気口が機体右側に取り付けられており、エンジンは単発、操縦システムはフライ・バイ・ワイヤで、陸軍要求の180kt(333km/h)を達成できるようです。
ローターの中心線からオフセットした位置にフラップヒンジがあることで、全関節型ローター方式よりも多くの制御モーメントを作り出し、ブレード面積も広く、6枚ブレードを採用することで機体のコントロール性に優れると見ています。

以上が、提案各社のまとめです。それぞれの機体については以前の記事を参照ください。

将来攻撃偵察機FARAに関して
2020年度会計で(議会の承認が必要ではあるが)予算化されたFVL計画は4項目からなっており、それらは将来型攻撃偵察機(FARA:Future Attack Reconnaissance Aircraft)、将来型無人機システム(FUAS:Future Unmanned Aircraft System)、将来型長距離強襲機(FLRAA:Future Long Range Assault Aircraft)、モジュラー拡張システム構造(MOSA:Modular Open System Architecture)となっています。

この中で計画が進行しているFARAプログラムに関しては、2019年4月に最終提案要請が出され、2020年3月に競合2社が選出され試作機の製造、最終選定された1社が生産開始を2024年に行い、2028年までに部隊へ引渡しすることが計画されています。これは既に退役したBell OH-58D Kiowa Warriorsの後継機種となります。

AVX Aircraft for US Army’s Future Attack Reconnaissance Aircraft (FARA) programme Image: AVX

Bell 360 Invictus Image: Bell Flight

Sikorsky introduced RAIDER X as its entry to the U.S. Army’s Future Attack Reconnaissance Aircraft (FARA) prototype competition. RAIDER X draws on Lockheed Martin’s broad expertise in developing innovative systems using the latest digital design and manufacturing techniques. Image courtesy, Sikorsky a Lockheed Martin company.

Karem AR40 compound helicopter design Image: Karem Aircraft

Boeing FARA design Source: Boeing