9月上旬のテストで、最終荷重試験中に機体のドアが吹き飛んだ件、以前の記事でメモりましたが、新たな情報が各ニュース記事で明らかになっています。
先ず吹き飛んだドアは「貨物ドア」ではなく、「客室ドア」で、これは破壊された直接の部分では無く、機体の内部構造が先ず最初に破壊され、二次的結果として客室ドアが吹き飛んだ様です。シアトルタイムズ誌などにドア周辺の画像が掲載されています。SNSでも確認できます↓
When Boeing's new 777X suffered a ground test failure in early September, it was not a cargo door blowout.
— (((LG7))) (@Lechatbon) November 27, 2019
The 777X’s fuselage split dramatically during the September stress test.#Boeing777X #Boeinghttps://t.co/rhhv6wTEKW
試験は型式証明の取得手続きの一環として行われる「最終荷重試験」で、米連邦航空局(FAA)の検査官の立ち会いのもとで「通常運航時を大幅に上回る荷重とストレス」を機体にかける内容でした。この荷重試験は機体を800トンの治具に取り付けて行われます。
「通常運航時を大幅に上回る荷重とストレス」は通常運行で予期される最大の数値の150%ほどの圧力をかけます。この時、コンポジット製の主翼は普通(飛行していない翼)のレベルから28ft(8.53M)も上に曲げていきます。これは通常の飛行状態で予想されるレベル9ft(2.74m)をはるかに超えるレベルです。同時に、胴体も数百万ポンドの力で最前端と最後端を下向きに曲げ、客室内圧力(キャビンプレッシャー)も約10psiまで加圧されます。これは通常テストの要件ではありませんが、ボーイングが選択したようです。これらの条件は実際の飛行で再現した場合、パイロットに3.75Gがかかっている状況となり、通常フライトでの最大1.3G と比べても、通常運行を大幅に上回る荷重とストレスとシミュレートしていることがお分かり頂けます。
ボーイングが1995年に初代777のテストを行った際、アルミ製主翼は154%で破壊しました。787では150%で中止されましたが、これはコンポジット製主翼が破壊した場合のコンポジット粉塵が舞うことを懸念しての判断でした。777Xもコンポジット製ですので、同じ形で進める予定だったと思われます。
今回、試験が中断されたのは、数値148%に達したタイミングでした。最大荷重の99%に達したタイミングで、最後の最後に「破裂」しました。9月の発生直後ボーイングの発表はそこまで重大では無いという内容で、私も日本の下請けメーカーのマネージメントがボーイングに訪問した際に、「問題無いから安心して」という内容説明を受けたと聞きました。
しかし、今回のニュースで匿名でボーイングやFAA関係者のコメント、実際の「破裂」の写真を見ると当初の発表よりも重大であることがわかります。一部の記事では、隣の建屋にいた作業者が「大きな爆発音が聞こえ、地面が揺れた」と書かれています。
150%に耐えることができなかった強度不足の原因は、胴体中心線下部、ちょうど主翼取付け部の後ろ辺りで、主脚格納室にあるKeel部分の強度が疑われています。先ず、この部分が破壊し、その結果として二次的破壊が発生し、その結果が今回リークした客室扉周辺の「破裂」となったようです。
以前の記事で書いた「貨物扉」であれば、ドア自体が機体の外側に向けて開くヒンジとなっていますが、客室扉は皆さん飛行機に乗る際にご覧になるように内側に開くタイプのドアです。ですから、客室ドアは機体側の開口部より大きくできています。今回は、機体の破壊が大きく、そのドアが外に吹き飛んだことになります。写真を見ると胴体のスキンと呼ばれる表面が胴体縦方向に裂けており、ねじ曲がった部品等が見えます。
今後調査が行われ、強度を強化すべき機体構造部位の特定と、設計変更が行われます。
今年色々あったボーイングに(ドア物理的に吹き飛びましたし)「Another blow」となります。
初飛行自体への影響は無いようですが、設計変更等で機体の引渡しスケジュール等で、更に半年程プログラムに遅れが出るのでは無いかという予想もあります。
FAA関係者の匿名のコメントが取り上げられており、要求最大荷重にあと1%のタイミングで発生している為、アナリシスを行い機体強度を上げる設計変更を行うだけで、再試験を行う必要は無いそうです。
参考記事リンク:
www.seattletimes.com