以前から話題になっていた航空自衛隊保有のF-15戦闘機の能力向上に関して、米国務省が最大98機の改修に必要な関連機器の売却を承認しました。費用は45億ドル(4900億円)。主契約社はボーイング社となり、日本国内の下請けは機体をライセンス生産した三菱重工となります。
国防総省傘下の国防安全保障協力局は「主要な同盟国の安全保障を向上させ、米国の外交政策と国家安全保障を支える」としています。
この改修で日本政府はRaytheon社製APG-82(v)1AESAレーダーを103セット、ミッションシステムコンピューター(Boeing Advanced Display Core Processor II)を116セット、BAEシステム社製ALQ-239デジタル電子戦システム(DEWS)を101セット購入することを希望しています。
これらの機器は米空軍で導入予定のF-15Xでも採用される機器です。レーダーに関しては既に米空軍のF-15Eで標準装備されており、イスラエルも同国のF-15I Ra’amで採用する予定です。このレーダーを搭載することで、迎撃戦闘機としての役割からマルチロール機として自衛隊のF-15が担う任務の幅が広がることになります。
今回の声明には米軍のF-15Xで導入されるアイテムが含まれていませんでした。例えば、コックピットの大型ディスプレーやHUD、赤外線捜索追尾システム(infra-red search and track system ー IRST system)などです。これに関しては、国内で開発済みのシステムを採用することになるからだと思われます。
米空軍で導入予定のF-15Xは、サウジアラビア空軍に引渡したF-15SAやカタール空軍のF-15QAがベースとなっており、FBW(フライ・バイ・ワイヤー)の操縦系統が採用されています。この為、翼のハードポイントをもう一箇所使用することができ、操縦性の向上と共に兵器搭載能力も増加できていますが、航空自衛隊のF-15Jは基本設計がF-15C/Dに準じる世代の為採用されておらず、この点で比べると大きな差となっています。
一部の記事では「20機」となっていますが、これは中期防衛力整備計画での数字で、2024年までの間上限20機まで改修があり得るという意味です。
今回100機前後分の承認はおりましたが、これが全ての機体を改修を約束するものではなく、沙汰止みになる可能性も十分あり得ます。中古戦闘機改修に1機50−60億円かかる事になりますので、新規で別の機体購入の方が経済的と思えば、方針転換もあり得ます。
参照情報:(国防安全保障協力局)https://www.dsca.mil/major-arms-sales/japan-f-15j-modernization
The Government of Japan has requested the upgrade of up to ninety-eight (98) F-15J aircraft to a Japanese Super Interceptor (JSI) configuration consisting of up to one hundred three (103) APG-82(v)1 Active Electronically Scanned Array (AESA) Radar (includes 5 spares); one hundred sixteen (116) Advanced Display Core Processor II (ADCP II) Mission System Computer (includes 18 spares); and one hundred one (101) ALQ-239 Digital Electronic Warfare System (DEWS) (includes 3 spares). Also included are Joint Mission Planning System (JMPS) with software, training and support; Selective Availability Anti-spoofing Module (SAASM); ARC-210 radio, aircraft and munition integration and test support; ground training devices (including flight and maintenance simulators); support and test equipment; software delivery and support; spare and repair parts; communications equipment; facilities and construction support; publications and technical documentation; personnel training and training equipment; U.S. Government and contractor engineering; technical and logistics support services; studies and surveys; and other related elements of logistical and program support. The estimated total program cost is $4.5 billion.