※ 2019年年末に再開しています。→関連記事
米空軍は今年から受領を開始したBoeing KC-46A 空中給油・輸送機(愛称はペガサス)に関して人員と貨物輸送を禁じる処置をとっています。原因は運用テスト&評価フライト中に発見された、貨物室床の積荷固定用ロックが勝手に解除される不具合が見つかった為です。
詳しくは、飛行前にオペレーターがしっかりとロックし、固定されたことを確認下にも関わらず、試験飛行中に貨物のロックが解除される事象が何度も発生したようです。幸いにも、飛行中に貨物がスライドするなど動きがなかった為、機体やクルーが危険な状況には至らなかったようです。
Boeing KC-46Aの主な任務は他機への空中給油ですが、機体のメインデッキにシートを設けることで人員輸送や、パレットを載せることで物資輸送も行うことができます。シート構成によりますが、FAAは客席58席もしくは、463Lパレット(✳︎)であれば18パレットの使用を認証しています。シートも貨物もそれぞれ仕様が違うローリングパレットの上に固定され、それが機体の床にロック、固定されます。そのロックで今回不具合が発生しました。
貨物室内床の貨物を固定するための金具は飛行中に積荷が動き出すなどした場合、最悪の場合は墜落の危険性もある為、非常に重要な部分です。その為、米空軍はこの欠陥に関して、安全に重大な危険を及ぼすと考えられる「カテゴリー1」指定しました。機体製造者のボーイングも重大な欠陥として解決をトッププライオリティーとしています。
今回の欠陥により現在KC-46Aが抱える「カテゴリー1」の欠陥は4つとなります。
内2つは、ブームオペレータが給油ブームを操作する際に必要とする遠隔画像システム(Remote Vision System)に関して、(1)一定の角度において太陽光などにより画像がブラックアウト等の不具合を起こすこと、(2)画像取得する3つのカメラの内、外側についているカメラ2台と中央のカメラとの取り付け角度の違いから、3つの合成パノラマ映像に歪みが発生するという欠陥。
そして、最後の問題は、(3)給油ブームの力が強すぎる為、比較的軽い機体が受油することが困難な場合があるという問題です(詳細は以前の記事をご覧ください。)。
これらの「カテゴリー1」の問題以外にも、製造機体の内部から異物残留(FOD)などが見つかる不具合&欠陥の問題も抱えており、米空軍はこれはボーイングの社内風土「Cultural」な問題だとしており、ボーイングが目標としていた年間36機納入という目標をスローダウンさせる原因ともなっています。(以前の記事をご覧ください。)
日本も導入する予定で、中期防衛力整備計画には、計4機のKC-46Aを導入することが盛り込まれています。1機あたりの調達単価は約249億円。美保基地に配備して、空中給油・輸送部隊1個飛行隊を新編する計画です。
(✳︎) 463Lパレット: (HCU-6/E)という統一規格品 サイズは88インチ(2,235mm)×108インチ(2,743mm)×2.25インチ(57.1mm)、重量290ポンド(131kg) 利用可能な面積は84インチ(2,134mm)×104インチ(2,642mm)となっており、余剰スペースを梱包に使用する。1つのパレットに搭載できる貨物の重量は、最大10,000ポンド(4,540kg)。
情報ソース:
https://www.defensenews.com/breaking-news/2019/09/11/air-force-restricts-kc-46-from-carrying-cargo-and-personnel/