令和元年12月20日に掲載された「我が国の防衛と予算(案)-令和2年度予算の概要-」資料の次期戦闘機コンセプト図。
毎回イメージ図は変わっている為、これが最終ではないと思いますが、あえて最新のイメージ図に踊らされてみようと思います。
来年4月から始まる2020年度において、次期戦闘機開発に約280億円(関連経費含む)が含められています。これまで「将来戦闘機」と呼ばれていましたが「次期戦闘機」や「NGF(次世代戦闘機)」と変更されています。(→関連記事)
この双発戦闘機は2030年代に配備したい考えで、英国などとの共同開発も選択肢として模索中です。
<2020年3月6日 追加更新>
政府は航空自衛隊が2030年代半ばに導入する「次期戦闘機」の開発に関し、日米共同で取り組む方向で調整に入りました。共同開発でも「日本主導」の方針を維持するため、日本が開発費の大半を負担するとしており、これにより基幹部分を開発し、将来的に機体を自由に改修できる優位性を保つ狙いです。同時期に新型戦闘機の計画を持つ英国との関係は技術協力にとどめるとなっています。年内に正式決定予定です。
日米共同開発の方向性が定まった背景には、自衛隊と米軍の協力関係の深化があり、高度な戦術ネットワークなど米軍と共有する必要があるためです。今回のコンセプト案に米国とのインターオペレータビリティの確保が記されています。
これまでF-22戦闘機にF-35のシステムをインテグレートする案などが出ましたが、その案は採用されなかったようです。←第六世代戦闘機の開発時期に、第五世代戦闘機を基とした開発は?ですもんね(世代の定義ははっきりしませんが)。。。
<追加更新終わり>
今回の資料に出てきたコンセプト図は、これまで使用されてきた26DMUとは形状に違いが見られ、それ以前に検討された24DMUに似た形状となっており、フランスとドイツが開発予定のFCAS(Future Combat Air System)や英国のTempestプログラムの機体にも見えてきますね。
26DMUの時との大きな違いは、先ず尾翼エリアで、これまで水平垂直尾翼4枚から45度ほどに傾けられた2枚のみとなっています。
主翼に関しても高アスペクト比のスリムな主翼となっています。主翼前縁は真っ直ぐですが、主翼後縁はインボード側(主翼機体側)は前進しており、アウトボード側(主翼外側)は後進したデザインとなっています。これも英国テンペスト戦闘機と非常に似たデザイン処理です。1990年代のマクドネル・ダグラス社のJSF戦闘機コンセプト機体にも似ているような、主翼だけで行くと1950年代のマクドネルF-101 Voodooにも似ています。
FCASとTempestでいくとFCASに主翼デザインは似ています。次期戦闘機とFCASは主翼後端が尾翼前縁の胴体取付位置と同じエリアとなっており、対してTempestは主翼後端が尾翼後端よりも後ろになっています。
今回のデザインのような高アスペクト比の主翼は、機体の抵抗も大きくなりますが、亜音速での航続距離と滞空時間を増加させることができます。また離着陸時の重量も増加できますので、燃料と武器搭載量を増加させることができます。
どちらかというと高機動戦闘機というよりも長距離飛行と胴体内格納庫に長距離空対空ミサイル等の大型武器を格納させ、長い滞空時間作戦行動できる機体のコンセプトとなっています。
資料では:
○ 我が国主導の次期戦闘機の開発(111億円)
将来のネットワーク化した戦闘の中核となる役割を果たすことが可能な戦闘機について、国際協力を視野に、我が国主導の開発に着手(戦闘機システム全体の初期的な設計作業に着手)
○ 戦闘機等のミッションシステム・インテグレーションの研究(76億円)
戦闘機等の作戦・任務遂行能力の根幹となるミッションシステムを将来にわたり我が国が自由にコントロールすることを可能とするために必要なミッションシステム・インテグレーション技術を研究する
○ 遠隔操作型支援機技術の研究(1億円)有人機の支援を行う遠隔操作型支援機の実現に求められる編隊飛行技術や遠隔操作に必要なヒューマン・マシン・インターフェース技術等に関する研究を実施
○ 次期戦闘機の開発体制の強化次期戦闘機の開発を効率的に実施するため、防衛装備庁に「装備開発官(次期戦闘機担当)(仮称)」を新設
となっています。
上記以外に関連経費で92億円が要求されています。
次期戦闘機への国際協力を視野にという部分では、現在候補となっているメーカーは、BAE Systems、Lockheed Martin、Northrop Grumman社(Boeing?)などが挙げられます。このうちBAEに関しては、設計やエンジンの採用、電子機器と搭載兵器の選定で、日本側に自由な選択を可能とする形で提案しています。
これ以外にも自己修復機能のような技術を採用するかもしれません。同様の研究は東大と富士重工(現株式会社SUBARU)が、飛行中に機体が破損しても安定した自動飛行が可能となる、人工知能技術を用いたシステムの実証実験を過去に成功させています。当時の実験では自動操縦中の実験機から右主翼の先端部約20%を分離・脱落させ、故障後もシステムの制御により安全に飛行を継続することを確認しました。実験機は、小型ビジネスジェット機のスケールモデル(全長約1.4m)で、機体設計を富士重工業が担当し、飛行制御に必要なセンサーや制御用コンピューターの開発、ならびに機体製作を東大が担当しました。この実験機に、富士重工業と東大とでそれぞれ開発した、異なる方式のニューラルネットワーク(人工脳神経網)を用いた飛行制御ソフトウェアを搭載し、いずれの方式でも飛行実証を成功させました。
TempestがAvro Arrowをステルス化させたデザインに見えるのは私だけ?
資料リンク:
https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2020/yosan_191220.pdf
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/p01_230607.html