シミ抜き治療ではありません。
アメリカ海軍はノースカロライナ州ハブロックのチェリー・ポイント海兵隊航空基地に所在するアメリカ海軍航空機関連の修理および整備施設「東部艦隊即応センター(Fleet Readiness Center East, FRCE)」に、レーザーショックピーニング設備を備えた新施設を立上げました。7月に完成しましたが、稼働するのは2020年となります。F-35関連で世界で二番目のレーザーピーニング設備を有する施設となります。
施設は2棟で構成されており、一棟がが実際のレーザーショックピーニング処置を実施する建屋で、もう一棟がレーザー発生装置が設置された建屋となります。
このレーザーショックピーニングにより、ダブラーなど補強材で重量増加のよる燃料や武器搭載量に影響を与えること無く、F-35戦闘機に必要とされるバルクヘッドや機体構造への対疲労強化、機体延命処置を施すことが可能となります。
レーザーショックピーニングはこの面でもコントロール性に非常に優れています。レーザー光線の中心と外縁ではレーザーの強度が変わりますが、面全体が均一なレーザー出力にできるようレーザー光を四角にする方法を採用しているとのことです。こうすれば、四角いレーザーをグリット状に当てていく事で、処置材料面が均一にピーニング加工処理されていくことが可能となります。
このレーザーショックピーニング処置は全てのF-35に適用されるわけではなく、「B」と「C」モデルが対象となっているようです。今回立ち上がったFRCEの施設では「B」モデルへの作業を行い、「C」モデルに関してはユタ州ヒル空軍基地で行われます。
F-35Bに関しては、初期生産分に関してカタログ値の8,000飛行時間からは程遠い2,000飛行時間という機体寿命やバルクヘッドのクラック等の問題がニュースになりました。このような問題が出る箇所に対して、強度アップを行うためにレーザーショックピーニング等の技術を使用することができます。
ショットピーニングとレーザーショックピーニング(レーザーピーニング)おさらい:
ショットピーニング自体は新しい技術ではなく、メディア/ショットと呼ばれるガラス製ビーズや、金属片などの球を高速で衝突させることで、材料表面に無数の圧痕と表面近傍に加工硬化・圧縮残留応力を付与する表面処理技術です。(サンドブラスティングに似ています。)ただ、これらの従来方法はメディアの飛び方までコントロールできない為、材料表面の仕上がりが均一では無くなります。
一方、レーザーピーニングは、短パルスレーザー照射によって発生する衝撃波を用いてピーニング処理を施します。パルスレーザーを当てる際に、水をノズルから同時に当てる(水膜を介する方法。水中にて照射する方法もあります。)ことで、金属表面にプラズマが生成され、水中ではプラズマ膨張を抑制できるため、非常に高いプラズマ圧力が生じます。この圧力により衝撃波が発生し、金属中を伝播し、衝撃波による動的応力が金属の降伏応力を超えると塑性変形が生じ、材料にピーニング効果が付与されます。一般的に、レーザービームの幅程度の深さにまでピーニング効果を付与できると言われています。
ピーニング処理を施すことにより、製品の長寿命化(=ランニングコスト低減)、耐環境性、疲労強度の向上、耐摩耗性の向上等の効果があります。
ボクサーの拳が長年のパンチで皮が硬くなって強くなる、、、イメージですかね。F-35もこれからさらに強くなってハードパンチャーになっていくのでしょう。
参照動画リンク:
↓LSP Technologies, Inc. 社の動画が参考になると思います。↓
参照リンク:
https://www.navy.mil/submit/display.asp?story_id=110618
https://www.lsptechnologies.com/